Sweet Bitter

□【1】強制的な出会い
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桜の花が散り、葉桜になりはじめた4月中旬。
柏は都会の空気の悪さを不快に感じていた。
佐倉を追って上京したはいいが、これからどうしよう。柏はそんな事を考えた。佐倉が上京してから契約したと言っていた、携帯電話の番号は分かる。でも佐倉は寮の生活だから一緒に住むことは出来ない。
少しだけ貯金はしていたが、家が決まるまでどうやって生活すればいいのか悩む。それでも頼る人がいないから、佐倉に連絡をしてみる事にした。
まだ携帯電話の契約をしていないため、公衆電話を探して、佐倉に電話を掛ける。
電話口に聞きなれた、自分に似た懐かしい声が響く。声からすると元気そうで安心した。
「佐倉、今から行っても良い?初台だよな」
そう言うと佐倉の返答は少し困ったような声色に変わった。もし用事があるなら終わるまで待っていてもいいが、何か困るような事があるのだろうか。
『と…友達が来てるんだけど、それでも良ければ』
どこか歯切れの悪い佐倉に首を傾げつつ、柏は佐倉の住む寮に向かった。


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「柏いらっしゃい」
「佐倉ー!」
久々に見る佐倉に興奮して、柏は佐倉に抱き付いた。ずっとずっと一緒に成長してきた片割れとこんなに長い時間離れたのは初めての事だった。
「甘えん坊さんだな、柏は。迷子にならずに来られた?」
「地図があったし、分かりやすかったぜ。電車の乗り換え以外は…」
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