長編草子

□白いキャンバスに、君を描いて
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佐久間博之の身体が好きです。



脱がせたい。


最近、教室で友達数人と話す佐久間の背中を追いながら、

岡田由利はいつもそれを考えている。



夏服の袖から覗く長い手とか、

第二ボタンまで緩めたシャツから見える鎖骨から首筋までのラインとか。


一から十まで理想通りで。




どうしても、その姿を真っ白なキャンバスに描きたかった。






「描きたいな…」



イメージだけが勝手に広がっていく。



それを消さないように、由利はそっと瞳を閉じた。








「あの…」

「高柳?」


入口から教室を覗き込んだ部活の後輩に、佐久間は眉をひそめた。




「あ、佐久間先輩…ちわす」


先輩もここだったんすか。とニコリともせず言う。

相変わらず愛想無しでふてぶてしい後輩に内心でため息をついた。



「お前こんなとこで何してんだ?」

「ちょっと用があって…。ああ、やっぱり寝てる」



佐久間を軽く無視して、教室を見回していた高柳は、

一ヵ所で視線を固定した。




「先輩、悪いんスけど、由利先輩起こしてください。ああなると誰かが起こすまで絶対に起きないんで」


ため息交じりに窓際で心地良さそうに眠る由利を指さす。



「岡田をか?」



しばらく高柳と由利を見比べて、佐久間は仕方なく、

後輩に使われて由利を起こしに窓際へと向かった。







「おい、岡田…岡田、起きろって」



肩を揺さぶられて、由利は眠そうな目で顔を上げた。


「なに…?」

「高柳が呼んでる」


「え、たか……っさささ佐久間くん!?」




自分を起こしに来た相手の顔を見た由利は、

あまりにびっくりして目を見開いた。
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