無双クロニクル夢

□兄妹水入らず
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太陽は朝から浮かれていた。
それはもう、だれもが解るぐらいに浮かれていたのだった。


「………落ち着け。」


注意しても無駄であり、忠勝はため息を吐く。

今日は秀吉の弟秀長が家康に茶会に呼ばれ、こちらに三日ばかり滞在することになっている。
その護衛で月も来る。しかも家康の気遣いによって月だけは太陽の家に泊まることとなっていた。

太陽は高価な茶器を用意し、鼻歌まじりでうなずいた。

「落ち着いてるって!あ、忠勝どの、そのお重開けといて。」
「…こんな贅沢品、殿が見たら泣くぞ。」
「いいんだよ!俺だって普段は質素なんだから…妹がくるときぐらいうまいもん食わせたくなるだろ?」

弁当には正月のお節にも引けをとらない豪華なご飯が詰められており、忠勝は呆れるばかりである。
太陽はそわそわと外を見ながら子供のように目を輝かせて待っている。
やがて庭に大きな鷹が止まると、太陽はたまらずに玄関の門へと飛び出した。

「月ッ!!」

ちょうど馬から降りた月が太陽に気付き、にこやかに笑って頭を下げる。

「ご無沙汰してました兄上。え?わわッ!?」

月の脇の下を掴み、そのまま持ち上げると一度回してから太陽は力一杯抱き締めた。

「よくきたな!ゆっくりしていけ!そのまま暮すがいい!」
「あ…兄上、いたたたっ!」

はしゃぎ過ぎている太陽の頭を一度殴り付け忠勝が月を下ろしてやる。

「あ、忠勝どのもご無沙汰しております…!」
「うむ。二日ほど泊まられるそうだな、ゆっくりしていけ。」
「はい。あ、こちらは藤堂高虎でございます。秀吉の弟の家来です。」
「ああ、知ってるぜ。お前のまわりの男はすべて調べあげ熟知している。」

どん引きな発言をしながら握手をかわす。
もちろんその手の力はすざまじい。
だが二人とも笑顔で受け答えをし、内心いらだちはどうにか隠していた。

「…秀長は直接家康どのの屋敷に向かわれたから、あとは帰る時まで自由にせよと言われてます。」
「そうか、まぁ茶飲んでとりあえずゆっくりしていけ!」
「はい。高虎はどうする?」
「俺のような下級武士が家康の館に入るわけにもいかんからな。適当に宿でも探すさ。」
「え?じゃあ私もそうするよ。」

太陽は忠勝を睨み付ける。

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