無双ビーエル
□お泊り
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「…怖いのだな?」
「……――は?」
「ホラーは俺も苦手だ。安心するがいい。」
ああ、ね。
そういうことかよ。
がっかりしながらもしっかり三成の肩を抱き、俺は映画に集中しようと、安っぽい女の悲鳴に耳を傾けるのだった。
「…んだよぉ、結局なぞのままじゃねーか。」
散々引っ張っておいて何も解決しないまま終わるホラーに愚痴りながら、隣の三成に話し掛ければ回答がない。
寝てる。
思いっきり、爆睡している。
「……くくっ。」
寝ている時まで眉間にしわを寄せている三成に思わず笑ってしまった。
そーっと横に寝かせて俺の上着をかけてやる。
可愛い寝顔を見ていても飽きないが、せっかくだから夕飯を作っておいてやろう。
相手に尽くす!
これがそっけない三成に、依存してもらう第一歩だ。
料理もほぼでき、盛り付けだけになったころ、腰になにかまとわりついて驚く。
「……三成、どうした。」
「ん、いい匂い。」
腰に抱きついて肩から手元をのぞいてくる。仲良くなると無防備になるくせは相変わらずのようで、猫かのようになついて離れない。
「もうちょっと待ってろ。あと香り付けするだけだから。」
「…清正、お前はいつも料理は器用にこなすのだな。」
「いつも?…あの頃料理なんかしたか?」
「………何か手伝うことは?」
「ないない。座ってろ。あ、これでテーブル拭いてくれ。」
台拭きを渡すと大人しく離れる。
ちゃっちゃと用意をすませ運ぶと、三成はソファの端によった。
「飯ん時はこっちでいい。ほら、残すなよ。」
「清正、すごいな。うまそうだ。」
「いいから食え。」
わざと三成の顔が見たくて向かいに座り、内心緊張しながら箸を運ぶ三成を見ていた。
何口か食べてふにゃ、と笑う。
「うまいぞ清正。いい嫁になるな!」
「…おー、じゃ、いつでも貰ってくれ。」
「エビフライもうまい。好物だ。」
なんとなく、戦国時代のもふもふしたアレを思い出してたらエビフライが食べたくなったってことは…黙っておこう。
上機嫌な三成に、おれも嬉しくなる。
「いつも一人で作って食うからな。俺もうまく感じる。」
「…片付けは俺がやるからな。また……一緒に食べよう。」
三成に気を使われて、こういうアプローチもありか、なんて奸な考え。