無双クロニクル夢
□冷酷な四国征伐
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「テメェは鬼かよ…ッ!?」
「正則、やめろ!」
食って掛かってきた正則を清正が止める。
だが、止めてる清正の瞳も非難めいた色を隠さない。
「…別に強要はしてない。戦線離脱してもいいよ。秀吉にも黙っててあげる。」
「それじゃあ同じだろって!!囮に成る奴らはぜってぇー助からねぇんだろ!?他にやりようあるだろ!!」
「あるよ。」
速答した月に、二人は固まる。
「じゃ、じゃあそれやろうぜ!!」
「駄目。」
「なんで!?」
「…うるさい正則。月よ、なぜだか解るように説明しろ。」
「説明?…………してもいいけど、それは私への信頼はないってことになるよね?」
月は笑いもせずに聞く。清正はうろたえたようで、一歩後退りをした。隣にいた左近もその言い方に苦笑いをする。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。確かにこれだけの兵力差ならよほど下手打たなきゃ負けませんよ。軍略なんかいらないってなもんです。」
「ならなんで少人数の囮をたてる必要がある?あんなすくなけりゃ犬死だろ。」
「そうだよ。」
またもやあっさり答えた月を二人は殺気立ってにらみつける。左近はまた苦笑いをして肩をすくめた。
そこに三成が横断幕をばさりと持ち上げて入ってきた。
「貴様等、何をしている?軍議はもう終わっただろう。持ち場につけ。」
「三成ぃ、だってよぉ!おかしいだろ囮なんて!!」
「……正則、くだらぬことを言うな。」
「はぁ!?」
「北西砦の囮には月が行くのだ。一番危険なことをする奴に何の文句がある。いいから持ち場につけ。」
「コイツは強いからいいけどよ、他の奴は…」
「嫌ならかえれ。俺は…月の強さを信じている。」
三成は月を見据えると、ふん、と鼻をならしまた幕の向こうへ行ってしまった。
最近ではすっかり無表情かかすかな笑いを見せるだけの月は、にこにこと三成の消えたほうを見つめる。その横顔に左近はついうっかり吹き出して笑ってしまった。
「アンタも今回は辛いんでしょうが、だめですよん、そんな三成どのに理解されただけでしまりのない顔してちゃ。」
「…ふるひゃいしゃこん…」
左近がむに、と月の頬を片手で掴んで鼻先に口付ける。
それを苛立ちながら清正はにらみつけ、正則を引きずりながら持ち場へむかうのだった。