無双クロニクル夢

□夜祭りと着物
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「………これを、私に?」


拡げた服は、白から青へのグラデーションが美しい着流しのような着物。
薄めで動きやすいいつもの童子のような短パンの上にはくようにと目の前の三成が言う。

「青、きれい。似合うかな?白とか赤しか着たことない。」
「……なにを言っている?貴様に似合わぬ色などない。」
「そうか?……今着ていい?」
「ああ。あと上も少し手直しさせた。これも着てみろ。これから寒くもなるから長めだが、裾が邪魔なようならまたなおさせよう。」

新しい着物に袖を通す。
さらりとした生地はきもちよく、仕立てもよかった。
月は動きながら袖や腰廻りを無表情で確認したあと、にこっと三成に笑いかけた。

「大丈夫!ありがとう三成。大事にするね。」
「有無。あとこれはついでに作らせたんだが…」
「え?」

遠慮がちに着物を差し出す。拡げれば見事な薄いさくら色に銀の刺繍が入った女物の着物だった。

「誰にわたすの?」
「…貴様だ。」
「……………」
「……………」

二人して黙り込む。
月はそのまま拡げたのを瞬きを何度もしながら眺めてから、それを大切そうに抱き締めて、蹲る。それをギョッとして三成は見て、彼にしてはめずらしくおろおろとしだした。

「…お、おい、なんだというのだよ?女に女物をわたしてなにが悪い!」
「いいの?」
「は?」
「……こんな姫様みたいなきれいな着物、私が着てもいいのかな?」

少し月の声が震えている。三成は苛立つようにその小さな背を抱き締める。

「いいに決まっている!俺があげたのだ!今すぐ着るがいい!」
「わわっ!?」

三成が思わず強引に服を脱がす。
胸元を割ったところで固まりあわてて背を向けた。

「じ、自分で着ろ!」
「え?あ、はい。」

月は着物を着て、赤とうすい緑の帯を緩めにしめると、背を向けている三成の肩をたたいた。

「着れた、か………………」
「?…やっぱ、へん?」
「変なものか。……女はなんというか、着るものひとつでこう、心を揺さ振らせるのだな。」
「?」
「………つまり、か、か、かわ、いいっと言っている。」
「ん?かわいい、か?私だぞ?」
「…ああ。」

三成の視線に何となく気恥ずかしくなった月はひらひらとした裾や袖を気にしだす。
その子供のような仕草がいちいち可愛らしい。

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