無双クロニクル夢

□小牧長久手の戦い 上
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「月は儂の友、儂が今となっては多くを失い、一番近くで見てくれていた…。月は決して私利私欲で動かず、この細腕で乱世を沈める為だけに身を粉にしてきた。その辛さ、女の身に再び背負うてもらうのに、なんの縛りがいる?」
「秀吉…?」
「……儂にはおまえさんが必要なんじゃ。間違えた道を進みだしたら、儂を叱って欲しい。友として。」

静まり返るその場を、月は秀吉から離れ、いつもどおりの正座を崩して、土下座をする。
月の土下座など、信長の前でしか見たことがなかった。

「月…?」
「……天下を一つに、力と金と数でまとめあげ、争いのない世をつくってほしい。その力添えを、私にさせて。その器は、秀吉、お前以外にはないと思ってる。だから、忠を尽くし、友として、家臣として、ここにいるみなで力を添えよう。………な、三成?」

振り返り三成ににこっと笑う。三成は眉間にしわをきざみつつ、月に頭を下げた。それは己の失言を悔やんでいるように見える。

「や、やめじゃやめじゃ!頭をあげとくれ!……とにかく、皆も月に儂と同様と思い忠節をつくせよ?」

ははっ!と一同頭を下げる。月は困ったなと無表情ながらも慌てていた。それを察してか利家が声を張る。

「じゃ!今夜は宴会だな!俺の家でやるぜ!」

利家が嬉しそうに提案すると秀吉もうなずき、手配を小姓に頼み、朝議は終わりを迎えた。




「月。」

朝議から退室するときに、清正が話し掛けてくる。ついでに正則つきで。

「清正、正則、ひさしぶり…ん?また背が伸びたか?」
「まぁな。それよりもお前どこ行ってたんだ?」
「…ん?内緒だよ。」
「ッ、俺がどんな思いでこの一年過ごしたとおもってる!?俺は…ッ」
「…心配かけたか。悪かったな。」

背伸びして清正の頭を撫でる。まるで子供扱いにいらだち、月の体を抱き締めた。

「え?おい清正…」
「っ…どこにも行かないって、言ったじゃねぇか!」
「……き、きよまさぁ、後ろ!」

正則の慌てた声に振り替えれば青筋たてたねねがいた。

「…清正ぁッ!!月を無理矢理断りもなく抱き締めるなんて!おまえさまもさっきしてたし!二人してお仕置きだよ!!」
「おねねさま!…これは、その、あのですね!」
「言い訳しない!」


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