無双クロニクル夢

□再開。そして対立
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「ぐ…っ!捨て置いたそこが要であったか…!!」


家康の悔しそうな声が中庭に居た稲にも聞こえる。
すぐに太陽の笑い声も聞こえた。
様子をみに行けば、案の定、板状を睨みしかめ面の家康と、対象的ににやけたままの太陽が稲に気付き手招きする。

「よぉ稲、見ろよ俺の逆転勝利…!」
「いやあおぬしから初勝利を得られるかと…これはどうにもならん。」
「ふふ…殿もお強いですが、太陽の碁は型破りで意地悪な手ばかりで、城内でも誰も勝てないのですよ。」
「……なぜだ全然誉められてない。」

がっかりする太陽に稲は楽しそうに笑う。
家康は負けを認め、まだ一人どの手が悪手だったか考えこんでいた。

「さて、そろそろ発つかな。」
「どこか行かれるの?」
「ああ。十日ばかり戻らん。使いついでに故郷の墓参りしてくるからな。」
「まぁ、それは善いことですね。ご先祖様もお喜びになりますよ。」
「ははっ、だと良いねぇ。直政!」

家康の近従、井伊直政を呼び付ける。呼ばれてすぐに利発そうな青年が現れる。

「ほら、殿の相手してやんな。このままじゃご立腹よ、お前のようにギリギリ負けるような相手でご機嫌を取らせるんだな。」
「無礼な…お強い殿に勝てるのはあなただけですよ。」
「はははっ、じゃあな家康!」
「うむ。気を付けていってまいれ。」

頭を下げて退室し、太陽は支度をすませ愛馬に跨ると、使いをすませ、友・孫市のいる宿場へと立ち寄った。

「よぉ…相変わらずよく俺の場所が解るな。」
「まぁな。情報だけが、俺の頼りよ。……孫市、一杯付き合えよ。」
「あ?こんな昼間からか?」

孫市馴染みの飲み屋に行き、個室で人払いをさせ、酒を飲み交わす。

「で?太陽よ、ただ酒を飲みに来たわけじゃないだろ?」
「…島左近という男を知ってるだろ。武田が滅んだあと、筒井だっけか?そこもやめて浪人中だが、中々徳川に仕えると言わないんだよ。なぁ、何で釣ればいいか、お前なら面識もあるし思いつかないか?」
「……左近かぁ。まず金や女じゃ動かないな。なまじ信玄や謙信の戦いを見てきたから、物量と数のみが勝利の道になっちまった今の時代に軍略は必要ないって珍しく苛立って話てたっけ。」
「……意外と熱いねぇ。そんな感じにみえねーおっさんだったけどな。」



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