無双クロニクル夢

□山崎での若武者達
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中国大返し。


のちに本能寺の変と呼ばれ、明智光秀の謀反により織田信長が討たれたこの事件を、秀吉は翌日に知る。
そこから距離にして200キロメートルをたったの五日間で光秀に追い付かせた軍事行動のことを中国大返しという。





[Side福島正則]



「甲冑や武具は別送する!褌一つで駈けに駈けよ!!」


三成ヤローのやけに張り切った声が聞こえて俺はバカにしたようにうるせーなに張り切っちゃってんのアイツ、と清正に言った。

「馬鹿。ここで光秀を討てば秀吉様の発言が強くなるだろ。張り切って当たり前だ。」
「ふぅーん?謀反人の光秀討ちゃー秀吉様のためんなるってことか?」
「ああ。」

清正はやけに苛立っている。眉間のしわがはんぱねぇなこれ。

「どうした清正?」
「…残ってた奴らは……月も、行方がわからないそうだ。火計によって跡形もないらしい。」
「月…!ああアイツ信長さまんとこ居たんだ!ああッ…ちっくしょー!!光秀ぜってーぶっ殺す…ッ!!俺のオンナを!!」
「馬鹿者、誰がお前のだ。」

馬駈けながら器用に三成の鉄扇が頭を直撃する。
あまりの痛さにわめけばしれっとした顔で三成は清正の横に並走した。

「…奴も武士だ。きっと惨めな散りぎわではあるまい。」
「てめぇ、言っていいことと悪いことがあるだろうが!」
「妙な期待はするな。先程入った知らせには…信長さまの近従の生存は絶望的。おそらく蘭丸と自害したであろう。」
「三成…ッ!!」

清正が怒鳴り付けると三成はそのまま先へ駈けていく。
相変わらず嫌なヤローだ。

「…清正、気にすんなよ?アイツあんだけつえーんだから、最後まであきらめねぇよ!な?」
「ああ。そうだ…そうに決まってる!」

険しい顔のまま駆け出す清正に俺も追い付こうと必死になる。

そうさ、アイツが死ぬわけねぇ。
月だけは俺の話を聞いてくれる唯一のオンナだ。
あんな優しくていい奴が俺より先に死ぬわけない。


「もし死んでたら清正が悲しむだろーが、馬鹿!」


涙腺が潤みっぱなしの俺をまわりがドン引きしながら見ているのを気付いたが、俺はお構いなしにアイツの名前をさけんだ。


「うおぉぉぉーッ!!…月ーッ!!!待ってろ俺が助けるぜぇーッ!!ッ!?はぶぅッ!!?」


再び前から鉄扇が飛んできて、俺は落馬した。



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