無双クロニクル夢
□お泊り会
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■前田家■
「…妻のまつと申します。利家からあなた様のことは仰せつかってましてよ。さぁ、どうぞ。」
「………妻?」
目の前にはどうみても利家よりはるか若い子が立っていた。
利家の特殊な性癖はさておき、仕事がたてこんでか利家不在のまま三日すぎ、四日目の夜にやっと家に戻ってきた。
「やっべー!ぜんぜんもてなせてねーし…今から挽回して酒でも飲み交わすか!」
さっそく月のいる客間にいき、酒と少しのつまみを持って尋ねる。
「よぉ!邪魔すんぜ?」
「…利家、お勤め大変なのに家にお邪魔していて悪いな。」
「いやいや、まつも話相手がいて喜んでるよ。一杯どうだ?」
人懐っこい笑みをみせながら利家に勧められた酒を飲む。
月は祝杯でもあまり飲まないが、今日は多少なり飲み過ぎているようだった。それは利家の話が面白く、時に人情味にあふれていて、純粋に楽しかったのだろう。
気付けば声に出して笑っていたのだ。
「ははは…ッ、それは柴田どのもあわてたでしょうね…!」
「おおよ!で、二人はますます犬猿の仲ってわけ!まぁ…最近はさらに仲わりぃんだけどな。」
「いつも仲裁に入って大変ですね。」
杯を傾け酒を煽り、月は真っ赤になった顔を少し俯かせた。
「利家はたくさんのものを持っている。それを、全部大事にしようとする姿は、とても好感がもてます。」
「…お前に誉められるとは、悪い気しねーな。それによ…お前もその一つなんだぜ?」
利家が月の顔を真っすぐ見つめる。その顔には笑みが消えていた。
「…手取川の時は、悪かったな。お前に、女に、あんなデカイ怪我させちまってよ。」
「いや、利家が駆け付けて詰所を制圧してくれたから…命拾いしたのです。ありがとう。それに傷も完治しました!」
にこっと笑えば、利家は困ったように笑う。
「強くって仁義に厚い…お前はほんと、いい女だ!間違えねぇ、戦国一の女だよ!」
「はぁ、それはどうも。」
「相変わらず誉め言葉は反応悪いなお前…」
ばしばしと背を叩かれて、酔っていたせいか酒を少しこぼす。しょうがねぇなと拭いてやれば、月は瞳を少し潤ませた。
「…謙信公……」
「え?」
そうつぶやいた瞬間、月はぱたりともたれかかり眠ってしまう。
利家は茫然としながらみた。
「…いや…ないない。」