無双クロニクル夢

□織田も手取川
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上杉に逢うては織田も手取川

はねる謙信逃げるとぶ長






敵対をよぎなくされた上杉と織田。

柴田勝家たち織田軍が七尾城の落城を知ったのは、ようやく手取川を渡り終えたところだった。
すぐさま勝家は撤退を開始するが、謙信率いる上杉軍の追撃が始まる。

まさに、引くも地獄、進むも修羅といった戦に、月は、勝家に進言した。


「…私が、各詰所を落としながら謙信公を撃破してきます。皆様は撤退をすすめてください。」

とうてい受け入れられない提案に、勝家はもちろん、利家も反対する。

「無茶だ!んなのは犬死にだぞ!」
「ですが、このまま謙信公が私たちを見逃すはずがない。もたつけば全滅しますよ。」
「利家の言うとおりだ。第一、わぬしに釣られずにこちらに猛攻をしかける可能性のが高い。」
「いいえ。」

きっぱりと否定する月は勝家に無表情に大それたことを言い放つ。

「謙信公は、私を好きなのです。私をおのれの手で殺す機会あれば、必ずそれを優先します。」

指笛を吹き上空から鷹を呼ぶと、謙信の陣を指差し行けと再び飛ばす。
勝家は苦渋の決断をし、月の肩をつかむ。

「死ぬな。生きて会おうぞ。」
「オジキ!?マジかよ!」
「はい。では。」

頭を下げ背をむけると、双翼紅蒼を鞘から抜き、走りだす。その背を利家が歯痒そうに見た。

「くそ!…死ぬなよ、月ッ!!」




川を越え、松任城に近づけば、待っていたとばかりに門が閉じられる。
とりあえず詰所を落とそうと近寄れば、おびただしい兵の数の中に、兼続が姿を見せた。

「………残念だ。」
「兼続…」

札を構えた兼続に、先手必勝とばかりに刀を奮う。

(―速い!)

兼続はあまりの月の剣技の早さに付いていけず、遅れを取る。
月の強さの一つに、その身軽さと動きの速さがある。
一方でタメ技の多い兼続は、相性としては最悪ともいえる。

(――強い。謙信さまでもこれは厳しいかもしれぬ。)

一瞬の隙をついて兼続は攻撃を仕掛けるが、ひらりとかわされ、逆に一撃をくらい立てなくなる。

「…ぐっ!」
「寝ていろ…起きれば斬る。まぁ起きれぬだろうが…」
「月…っ!お前だけは、謙信様と戦わせたく…な……」

走りだす月の背を睨みながら兼続は気を失った。


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