無双ビーエル

□泥だらけの花
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来週にもとうとう秀吉とねねが家にもどるという知らせを、左近は食事をしながら三成に教えてくれたのだった。


三成は暇をぬって左近によく会っていた。

左近は今まで出会ったどの男より誠実で優しくて面白い男だと三成は感じていた。何より頼りになって、たのもしい男だ。

「…そうですか。清正さんはこちらも手を尽くしたんですが、なかなかに引き離すのは難しいですな。まぁ大学は建築関係に社長は進めさせたがっているから、三成さんの大学には建築ないでしょう?あと半年の辛抱です。」
「いや…清正ひとりならまったくといっていいほど暴力はないのだ。」
「それにしては………相変わらず疲れた顔をしていますな。」
「………秀吉さまが家にもどって来られれば問題なかろう。」

三成の杞憂は清正だけではなく、最近妙に独占欲が酷い宗茂にあった。
宗茂の存在を、流石に左近には打ち明けられない。
三成は左近が優しく接してくれれば接してくれるほど、どうしようもなく己が汚れた存在に感じてしまう。

それが何故だか、三成は知っていた。

左近に、恋をしはじめていたのだ。



「…今日もごちそうになってすまない。」
「いいんですよん?前にも言ったでしょ、こっちは役得だって。さ、送りますから車に乗って。」
「……か、」
「え?」

左近の車に乗り込もうとせずに、薄暗くなったというのにはっきり解るほど真っ赤な顔をした三成は俯きながら訴えた。

「………まだ、帰りたくない…左近と、もう少し、一緒に……」

小さな震えるこえに、意味が解らぬほど左近は若くない。
優しい手は三成の頭を撫でて、そのまま左近の胸に三成を押しつけるのだった。


「…いいですよ。俺は、アンタがとても可愛い。弟さん達を殴り殺してやりたいぐらいには、ね。」


左近の腕のなかで三成は泣いてしまう。
夏も終わり、初秋の少し冷えた風を感じながら、海添いに見える綺麗な夜景が霞むぐらいに、左近が眩しく感じる。
繋いだ手が温かくて、また泣いてしまった。

「まいったな。そんなに泣かれると、我慢できない。」
「我慢?」
「アンタを大切に思ってるんですが……抱く欲は弟くん達と同じなんです。でも、同じになりたい訳じゃない。」
「………いい。同じでも、違う。俺が、望むのだ、それが違う。」

観念したように笑い、左近が優しく口付けてきた。


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