無双ビーエル

□泥だらけの花
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正則の実家は他県で遠く、高校の卒業を待たずにすぐ親元へ向かえとの指示だった。
今まで育て上げてくれた二人への義理と、親の借金まで背負わせていたことに愕然としながら正則は頷くしかないのである。

「解ったよ。世話になったな親父、ねねさま。やっと、恩をかえせるってんなら俺は明日にでも行ってくるぜ!」
「…すまんの。転校の手続きは終えとるで、向こうで卒業だけしとくれりゃー、会社にすぐ入れるようにしておく。頼んだぞ!」
「おうよ!じゃあ準備すっかな。手伝ってくれよ三成!」
「あ…………ああ。」

明るく言ってはいるが、沈む雰囲気を漂わせて正則は三成の手をひき部屋へと連れていく。
居間に残された清正は秀吉とねねに首を傾げながら聴く。

「…なんというか、急な話ですね?」
「ああ。できたら正則の卒業を待ちたかったんじゃが…裏切られるのが明確になってきてな、そりゃいかんってことだ。」
「お前さまぁ、でもつらいよぉ!」
「ねね、こうなることは決まってたんじゃ。正則は運良く今恋人もおらんのだ、卒業後は儂の商談相手の娘と結婚してもらう。清正。」
「は、はい。」

正則の結婚の話に驚いた清正は、つい返事が上ずった。

「…お前さんにも会社のため、山崎の娘と大学を出たら見合いしてもらうぞ。それまでは何をしてもええ。だが、道はある程度選べないことを忘れるな。ええな?」
「ッ……ひ、秀吉さまっ、俺は、好きな人がいますっ!」

清正が絞りだすように言葉にする。秀吉は苦笑いをして俯く清正をみた。

「三成、じゃろ?」
「ッ…!?」
「アレは綺麗だ、仕方ない。だが儂はな、三成を引き取ったのは清正、お前にくれるためではない。すまんが、諦めとくれ。」
「……………」

唇を噛み締めて頷かない清正に、ねねは心配そうに背を撫でる。秀吉の残酷な言葉と今まで生活してきたことへの二人に対する恩義が頭を駆け巡り、清正は居てもたってもいられなくなって居間を飛び出す。

「お前様…」
「仕方あるまい。どのみち姉弟では婚姻はできん。三成と清正は正則とは違って儂の戸籍にすでに入ってしまっとるでの。」
「…正則も可哀相なことをしたわ。ねぇ本当に徳川とつながりがあるのかい?」
「話のもとは、最近引き抜いた左近での。元々徳川系列の会社におったから、まず間違いはない。ちゃんと調べたしな。残念じゃのお」


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