無双ビーエル

□泥だらけの花
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「宗茂、今日は午後に用事があるから、もう帰る。」
「…ふぅん?まぁ、いいが…ならお別れのキスをくれないか?」
「こ、ここでか?!」
「ああ。でなければついていく。」
「ッ!」

キャンパス内で一番人が多い中庭の通りで、宗茂が目を閉じる。そのきれいな顔に背伸びをして三成は口付けた。一瞬で離れたが、まわりが騒つきだす。
あからさまにキャーと悲鳴をあげる女子もいた。

「っ…!もう行く!!」
「ああ。」

返事はしたものの、宗茂は三成の細腰を引き寄せて抱き締めると耳元でささやく。

「どうやら俺にも嫉妬心があったらしい…今度そんな男の匂いが染み込んだ服を着てきたら、その場で脱がすぞ。」
「っ…あ、ああ。解ったらから…離してくれっ!!」

少し離れて至近距離からみた宗茂の表情は、まったく笑っていなかった。目があえば、三成はぞっと背筋を凍らせる。
怯える三成を見て、すぐにふっと笑うと、やっと手を離した。
震える足を叱咤し、三成は逃げるように走りだす。その背をやはりいつものように笑って見送っていた。



駅まで行くと、いつもと反対に乗り、二駅先で降りた。混雑した通りに出ればクラクションが鳴る。
見ると黒のセダンから左近が手を振っている。すぐ駆け寄り乗り込んだ。

「すいません、遅くなりました。」
「いえいえ!さて、行きますか。」

三成のシートベルトをはめてやり、膝に左近のスーツの上着をかけてから、パーキングからドライブに入れる。アクセルを静かに踏んで、走りだした。

「…あの、上着、皺にならないか?」
「いいんですよ。隣にそんな美脚があっちゃ、脇見しかねないので。あ、何か嫌いな食べ物はありますか?」
「ない。」
「そうですか。なら予約したところで。」

こくり、と頷くと三成は左近を眺める。左近は視線に気付きながらも前を見たまま笑った。

「どうしました?」
「島さん、門限があるから、それまでにお願いします。」
「解りました。まぁまだ昼です。少しは付き合ってもらいますよ?」
「はぁ、私でよければ。」
「…アンタじゃなきゃ、ダメですよ。」
「?」

全く左近のアピールも通じないようで、三成は車窓から流れる景色を見る。

食事を済ませ、左近は三成をある場所へ連れていく。

「……ここは、会社?」



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