無双クロニクル夢

□情けか情か
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月は人の噂話を好まなかった。

なのでそういった世相が弱く、世間話も時には始まると無言で立ち去ったりする。また、寡黙で何を考えているか解らず不気味であると同時に、勝家には武士の鏡と誉められたこともあるが、それらが得をしたことはほとんどない。
武功を立てても信長から何も受け取らないし、立場も食客のままがいいと言い、誉め言葉にはまったく関心を示さない。

無欲で、強いとあらば、織田家家中でも強い立場や賢い者にとても好かれる。
逆に無能な者や強欲な者には疎まれているため、丹羽長秀などは人をみるときわざと月の話をふり、誉めた者を信用たる人物だと言った。
しかし、先の延暦寺焼き討ちの件で冷酷無慈悲と罵られ、仲がよかったにもかかわらず、最近では少し月とは距離をおく者も多い。


そんな月だが、この日はたまたま軍議のあと、話好きな秀吉に捕まり、珍しく話の渦中にいた。

「いやぁ、お市様がとても可愛くてのぉ…ついついお誘いをかけたらしつこいと平手を食らってな、帰ればこの有様よ、ねねにもなんとなぁーくばれて反対に平手!トホホじゃ…」
「いや、当然でしょ秀吉。阿呆。」
「ぶあっはっは!月に阿呆って言わせるとは大物じゃねぇの…!」

利家がばしばしと月の背を叩く。秀吉は阿呆呼ばわりにさらに陰気な雰囲気を纏い、腫れている両頬を撫でた。

「やっぱ男は妻一筋が一番だよな?そんな男に惚れるだろ?」
「いやいや、側室が多くて器量が示せよう!こっちのがよいじゃろ?!」
「「どちらと婚姻したい?」」

利家と秀吉に迫られ、月は困り顔で近くにいた半兵衛と官兵衛を見た。

「え〜!俺月の好み興味あるからそんな子犬みたいな顔されても助けないよ…!」
「半兵衛、月をさらに困らせるな。」
「…あ、じゃあ、この四人なら誰と婚姻したい?!」

話がすっかりすり変わって、どうやら誰か選ぶまで問い詰めるらしい四人に、諦めて月は答えを考えた。

「………みんないやだ。」

がっくりとうなだれる利家と秀吉。えー!と文句を言う半兵衛と、内心ちょっぴり傷ついた官兵衛。

「なんで!可愛い俺か、陰気な官兵衛どのか、お調子者の秀吉どのか、脳まで筋肉の利家どのかだよ?!」
「…お前、ワシ一応主だぞ!」


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