無双ビーエル

□花火と恋
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二時間きっちりたってから、三成が筆記用具を片付けた。俺は雑誌を放り投げ、立ち上がった三成の体を抱き締める。
三成は腕のなかで、真っ青になった顔をそむける。

「……俺が、嫌いか?」
「ッ…そ、んな、ことは…」
「嫌わないでくれ三成……お前に嫌われたら、俺は正気でいられない…」

悲痛に訴えれば、三成は戸惑いがちに俺の背に手を回し、撫でてくる。

ほら、な。
大丈夫だ。三成は、俺を嫌えない。
恐がってはいる。
大丈夫だ。優しく、優しくしてやればいい。

「……今日は何もしない。だから一緒に寝てもいいか?」
「…あ、ああ。」

三成のベットに入り、腕枕をして胸に三成の顔を押し込める。暑いといったので冷房をつけてやった。
髪を何度もゆっくり撫でてやる。

「来月の、花火一緒に見に行こう。」
「……俺と行って、楽しいか?」
「もちろんだ。お前とできることは、何でも楽しい。」
「…」

三成の瞳がゆれる。
もう一押しだ。

「…強姦されたってのに、お前を責めて悪かった。守ってやれなかった自分に、苛立って、それをお前にぶつけちまった。」
「…きよまさ…違う、俺が悪い。」
「いや、悪くない…傷ついてたのに、あんな……ごめんな。」
「…清正っ」

三成が泣きだす。
額にキスをして、俺も泣き真似をした。

「…でも、お前がすきだから、一度抱いちまったらもう、やめることなんかできない。お願いだから、嫌わないでくれ…頼む…」

悲しそうに必死に言えば、三成は慌てて上半身を起こし、俺を上に乗って抱き締めてくる。

「嫌いじゃない本当だ清正!…でも、こわい……お前等が、こわいんだ…!」
「…ごめんな。優しくする。正則にも俺から言うよ。もう殴らせない。」

小さな体を抱えて布団に引きずり込む。キスを軽くして、またゆっくり背を撫でてやった。

「……花火」
「ん?」
「花火、楽しみだよ清正…」

三成が俺を見上げてわずかに笑う。
俺は正気じゃなく嬉しくなった。
ああ!と笑顔で返事をすれば、三成もまた微笑む。


「……清正の笑った顔、久々で嬉しい。」


そうか、俺もか。
俺も、笑うのを忘れるぐらいに必死に、お前を追い詰めることしか考えてなかったんだな。

「…三成、好きだ。」

それには返事をくれない三成への怒りをぐっと堪えて、もう一度、キスをした。



END


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