無双ビーエル

□花火と恋
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「…正則はまた夕飯いらないのか?」
「ああ。補習のあとそのまま出かけるらしい…」

夏休みになり、俺は昼間は部活が忙しく、正則は卒業をかけた補習と居酒屋のバイトで昼間も夜もいないことが多い。
三成は休み中に資格試験の勉強をしてるらしく、頻繁に図書館やカフェに行ってるらしい。
一応、外出時にはメールを俺に送ってくる。

「…いただきます。」
「ああ。」

三成の作った夕飯を食べる。正則がいないと、とても静かだ。

「おいしい。」
「…そうか。」

三成はすこし食べると食器を流しに運び食洗機に突っ込むと、すぐに風呂場へ行ってしまった。
残された俺はなんだか寂しく感じる。

寂しい。
三成が俺を避ける。
嫌われた。
俺も、正則も。

―――本当に?
そんなに、脆い絆か?


食器を運び、食洗機のスイッチを入れる。
明日の分の米を研いで、炊飯器のタイマーを翌朝にセットした。

湯上がりの三成が夏だというのに襟元のボタンをしっかり止めたパジャマを着てそそくさと二階の部屋へ行ってしまう。おやすみ、と小声で行った。
まだ六時なのに。
部屋にくるな、今日はやりたくない、って訴えてくる。

俺も風呂に入る。出てから三成の部屋に行った。

「…――三成…」

机で何やら勉強中の三成が肩を震わせて俺に振り向く。その瞳は、恐怖なのかじんわり涙ぐんでいる。

「…何勉強してるんだ?」
「い、まは、法律とか……」
「あ?難しいな…」
「…清正は高校も建築の授業あるし、ここは少しわかるかもな。」

指差された箇所をみたがさっぱりだ。三成の肩に手を置いて、後ろからうなじにキスをする。シャーペンを握る手が震えている。

「…邪魔か?」
「っ…あと二時間はかかる。今、過去問やってるから、採点とか、するし。」
「解った。待ってる。」

自分の部屋から雑誌を持ってきて、三成のベットに寝転びながらパラパラめくる。つまらない。動かないけど、勉強してる三成を見てたほうがよっぽど面白い。
蛍光灯の明かりで真っ白い肌が余計白くみえる。赤い薄い唇にシャーペンのノック部分を押しつけて考え込む姿は、とても幼く見えた。
可愛い。
作りがすべて繊細で弱くて、赤い髪も細い腰も小さな胸も、全部愛しい。


こんなに、好きなのに。




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