無双ビーエル

□ハンカチと傘
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大学に着いて、清正にいま大学ついた、とメールする。
これを守らないと、帰ってからひどい目にあわされるのだ。

教室に行って宗茂の分の席までとっておき、講義の前に予習したところを眺める。
大学とは楽なものだ。
要領がよければ単位など落とさずにすむし、この講義なんて出欠の点呼も甘い。同じ声が何度か平気で返事をする。

「おはよう…三成、席ありがとう。」
「……ああ。」

ギリギリにあらわれた宗茂にまわりの席にいた女子が浮き足立った声をあげる。それにわざわざ振り返って宗茂の美しい顔でにこりと笑うのだから恐ろしい。

「さっき掲示板みてきたら今日の午後の二コマ休講だったぞ…買い物にいこう。」
「ああ。宗茂、前を見ろ。」
「…そう怒るな。」

耳に勝手に人の髪をかけると、人目をはばからずこめかみにキスをしてくる。後ろの席が騒めくのを無視して板書を続けた。
宗茂もまったくそれを気にせずに人の教科書を見る。
いいかげん、手ぶらでくるのをやめろと言いたいが、無視した。



高校生である二人はあまり大学のカリキュラムを知らない。
割と自由がきき、暇も作れる。
だがそれをあえて言わずに高校のように朝から夕方までびっしり授業があると入学当初から言っておいた。
そうでもしないと清正の監視がうるさくて、自由な大学生活が送れないと危惧したからだ。
ひどいときには午後丸々講義がなく、駅前で買い物や映画を見てから帰れる程ひまがある。

今となっては、それが仇となったが。


宗茂には親や弟達が門限等に厳しくて外泊などめったにできないと言った。
意外とあっさりそうか、と笑い、お前はいつも同じ時間の新幹線に乗るよな?それまでの時間は俺に使え。どうせ図書館とかカフェに行くだけだからいいだろ?と言ったので、俺は喜んでそれを受け入れた。
これで二人に怪しまれなくてすむ、と。


手をつないで大学を出て、バス停にむかうと思ったが、宗茂は逆の方向に手を引く。

「…宗茂、逆では?」
「気が変わった。お前を抱く。」

指がぴくりと動き、それを宗茂は笑った。俺は足元が竦んで、ふらつきながら引かれるがままに歩く。

「久しぶりだ三成を抱くのは…」
「……二日前にも、した。」
「学生の時はほぼ毎日三成の体を触ってたんだ…少ないほうだ。」
「…――ッ!」

悔しい。悔しくてしかたがない。


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