無双ビーエル

□ハンカチと傘
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「それまで、スリルを楽しめばいい…甘い恋人ごっこと、間男のような不倫ごっこができるんだ。楽しいだろ?」
「…そんなの…したくはない!」
「卒業したら結婚しよう。それまで何でもすればいい。結婚したら、お前は家から出さない。俺だけの三成にする。」
「……っ…ふ、ふっく、ひっ」
「……今は泣くのも自由だ。」

絶対に宗茂からは逃げられないと確信すると泣きだす俺に、宗茂は優しくキスをする。

初めてぎん千代に紹介されたとき、こんなに綺麗な男がいるなんて、と感心した顔も、見るたびに無機質な彫刻のように冷たく冷酷に感じてくる。

「…さあ、全部脱げ。服にしわができたら弟くんに、また折檻されるぞ?」

これで俺を愛してるなんて、なんておこがましい。






宗茂のマンションを出ると、外は強い雨が降っていた。
駅まで送ってもらい、ビニール傘を無理矢理渡されたが、ホームに入ってからわざとトイレで捨ててやった。こんな小さな優しさすら、嫌悪する。

「あ。」

電光掲示板に新幹線の運休が表示される。どうやら台風だったらしい。
慌てて正則に電話する。

「正則か?…ああ、どうやら新幹線はとまってるらしい。……いや、普通電車は動いてるから、それで帰るから遅くなる。……ああ、じゃあな。」

携帯を切り、慌てて電車に乗る。なんとか二人掛けの対面式の座席に座れたが、隣にずいぶんと雨に濡れたのか、服がびしょ濡れの男が座ってきた。

「…あ、これは失礼。濡れましたかな?」
「いいや、問題ない。」

かなり大柄な男で、男らしい顔で、包容力がありそうな笑顔をみせる。

「いやぁ急に降られまして。この時間混みますかね?」
「そうでもないだろう。ラッシュも三駅すぎれば空いてるぞ。」

ぽたぽたと顎から水滴が落ちるほどた。スーツもさぞかし気持ち悪いぐらい張りついてるだろうな。
ふと、ハンカチを取出し、隣の男に渡した。

「え?…あ、いいんですか?」
「ああ…安物だ、存分に使え。」
「はは、アンタ、おもしろいですね。ありがとう。」

ピンクの子供っぽいハンカチをしぶい大人が使っているほうがよっぽとおかしい、とつい笑ってしまった。

「?なんです?」
「…いや、よく似合うぞ、ピンクが。」
「おやおやァ、その笑い方は馬鹿にしてるでしょ?」
「ふ…バレたか。」


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