無双ビーエル

□寂しく幸せな海
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さんざん遊んで疲れたのか、砂浜でいつのまにか寝てしまい、気付いたらコテージのソファーで服に着替えてあり、寝かせられていた。

「…さこん?」

しん、として誰もいない広いコテージをうろつく。
外は夕暮れでオレンジに海が染まる。
携帯をとりだしてベランダからそれをカメラで撮った。
今どこだ?暇ならウチにあそびに来い!という兼続から来ていたメールに、写メつきで返信したら、すぐに電話がかかってきた。

『三成が海かっ!めずらしい!』
「…兼続、こえが…」
『いつかえる?幸村の試合が来週あるから見に行かないか?』
「当然行く。兼続…少し相談なんだが…」
『どうした?』
「暑気にやられたのか…左近といると心搏数が妙なのだ…激しくなったり、ゆったりしたり…病気か?」
『……………ある意味では、病気だが、割と誰にでもあることだから、深く考えるのはやめることだ。』
「そうか?…あ、左近が帰ってきた!じゃあまた連絡する。」
『ああ………いろいろと気をつけるんだぞ。』

いろいろ?
切れた電話をほおり投げ、玄関にむかえば左近が荷物を抱えている。

「あれ、起きましたか。具合は悪くないですよね?」
「ああ。左近、あのな…」
「お腹すきましたか?ご飯テイクアウトにしちゃいました。結構おいしそうですよ。」
「いや、あの、左近…」

ん?と左近が不思議そうに顔をあげてこちらを見る。ほら、まただ。心臓が苦しい。

「……出かけるときは、置き手紙でもしてくれ。」

自分が寝てたのになんて言い草だ。
思わずシャツを握り締めると、視界が暗くなる。

「ッ……左近?」

いつもよりきつく抱き締められて、心臓がとまりそうになる。

「心配しましたか?…左近がいないと、ダメですよね?」
「左近…?」

ぱっと離されて、左近は荷物を抱え直し中へ進む。
一瞬惚けてからあわてて追い掛けて、その背中に吸い込まれるように額をよせた。少し汗ばんでいる。

「……そうだな。いないと困る。」
「三成さん…」

リゾート地でお前と二人きりだ。お前がいなきゃ、俺もいないのだから、いなきゃダメに決まってる。


「……困るよ、左近…」



数日滞在して、帰りの飛行機でふと思った。

左近と過ごしたことが、いつか、思い出になってしまうんじゃないかと。



だって、幸せが、苦しいんだ。




END


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