無双ビーエル

□寂しく幸せな海
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左近が用事がないなら出かけようと言いだした。すでに学校は夏休みだし、頷く。
夏なので海に連れていくと言う。海は人が多くて苦手なのだ。そう伝えたら解りました、と言って荷物を持ち、車にのった。
少し、荷物が大きくないか?

「あ…乗り物酔いとかないですか?」
「ない。車はまったく酔わないぞ。」
「いえ、飛行機なんですけど…」

びっくりして左近を見れば、にこやかに笑いかけられる。固まる俺に、車はどんどんと空港に進んで行った。


「いやぁ、空が青いね!…ここならプライベートビーチだから大丈夫でしょう?」
「……いや、左近……お前はじめから計画してたな…」
「はは、左近の軍略!みましたか?…荷物はだいたい持ってきましたが三成さんの私服少ないからあとで買い物行きましょうね?とりあえず、海入りましょう。」

常夏の高級リゾート地で、三成は途方にくれていた。この感覚は左近の家に行ったとき引っ越しの手配がされていた時と同じだ。

「ホテルでもよかったんですけどね、三成さんの世話が焼きたくてコテージタイプにしちゃいました。」
「……左近、聞け。」
「え?」
「俺はこういったサプライズは苦手だ…その、嬉しくてもうまく喜べなくて…左近の期待に答えられない。」

左近がカバンから水着を出す手を止めて、うつむく俺の頭を撫でてくる。その大きな手がいつもより暑くて、なんだか余計にくらくらした。

「いいんですよ、戸惑っていれば…第一、左近がやりたくてやってるんです。三成さんを喜ばせようってか、左近が楽しいからやるんです。迷惑なときもあるかもしれませんが、付き合ってくださいね?」
「迷惑なんて…その、左近、ありがとう。海、行こうか。」

笑って左近に言えば、左近がぎゅっと抱き締めてくる。

「…それにね、三成さんはきっと、左近に甘やかされるのすきですよ。」
「む!俺はガキじゃない。」
「はいはい…さ、着替えて!」

水着をわたされる。俺はぎょとして左近に訴えた。

「なぜ黒のビキニなのだ!もっと普通のあるだろ!」
「……なかったです。」
「嘘をつけ!左近はふつうのダボダボのやつじゃないか!」

まぁまぁと宥められて着替えさせられたが、これは際どすぎて変ではないか。

「……左近」
「大丈夫ですって!誰もいないから…ね?ね!」

結局押し切られてそのまま海へ行く。


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