無双クロニクル夢

□姉川のなみだ
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織田に反旗した浅井、朝倉は姉川の戦いで敗れ、滅亡した。
市は三人の娘と共に織田家にもどり、手厚い保護を信長から受けていた。


月はよく市のもとを訪れて三人の娘と遊んだ。
その日も上の子二人に散々お馬さんごっこをしたあと、はしゃぎ疲れてお昼寝をしだすまで遊んでやった。

「月…あら、寝てしまったのですね。」

別室で一番下の子、お江を寝かし付けてきた市がもどり、笑って月の隣に座る。

「長女の茶茶は特に市に似てる。まだ子供なのにとても美しい。」
「………そう。」

市が月の手を引き部屋をでる。連れていかれるまま廊下を歩くと、市が悪戯な笑みを浮かべた。

「ねえ、市にもお馬さん、してくださりませんか?」
「…え?!」




侍女に子供を見るよう言付けし、市を前に乗せて馬に乗り込むと腹を蹴り、走りだす。

「馬になれって言われたときはおどろいた…!」
「ふふふ、でも、すぐに四つんばいになって、月は市のわがまま、何でも聞くの?」
「軽そうだったから、いいかと。もし大柄な信長さまや利家が言ったら断りますよ。」
「ふふっ。でも子供達が羨ましかったのは本当よ?月ったら、市とぜんぜんお話してくれないんだもの。」
「……市の、眼が見れない。とても、罪悪感があって。」
「…あの脇ざし、やっぱり月が持ってきたのね……」
「…………はい」

市が月に少し寄り掛かり、手綱を手放して月の腕をやさしく掴む。
馬の速度を緩めて、念のため忍びに口笛でここにいると合図した。すぐに気配が増える。

「……ここでいいです。」

領内の小川に馬を止める。市は降りて川の水に触れた。月は馬を木に繋ぎながらそれを見つめる。

「……兄に言われました。新しき玩具を得たから、市は愛でるだけにすると。」

水で冷えた指先を月の頬につける。市は笑いもせずに、月の小さな体を抱き締めた。

「玩具はあなたです。兄が、あなたにひどいことを……ごめんなさい。」
「…それでも、市を殺しに行ったのは私の意志です。」
「はい。でも、あなたでなくてはいけなかったのでしょうか?兄はあなたに甘え、試している。これからももっと非道なことを頼まれるでしょう。」
「大丈夫…私には心がないのです。」
「それでも私を殺せなかった。」



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