無双ビーエル

□動物園の子供たち
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「…三成、顔色が悪い。まだ調子は悪いのか?」
「問題ない、ただの風邪だ。新学期早々ノート助かった兼継。」
「三成どの、そのケガはどうしました?」
「心配するな幸村。転んだがもう治った。」

着席しせっせと兼継のノートを写し、休み時間になるたびにクラスの直江兼継と真田幸村が同じ質問を繰り返すのをうっとおしそうに睨む。

「どうみても殴られたあとですよ…失礼ですが家にも行きました。引っ越しされたのですか?」
「ああ。」
「どこに?三成どの」
「幸村、うるさいと言って」

だん!と少し大きな音をたてて幸村が三成の机を叩くと真剣な顔をして覗き込んでくる。

「私が安心するまで質問はやめませぬ。」
「…」
「三成、あきらめろ。」
「…わかった。放課後話そう。ここではできん。」

三成は諦めた。
誠意には誠意で返さねばならない。だが、とても真実を言う気にはなれない。借金の話ももちろん、余計な心配はかけたくないのだ。



「…で?その喧嘩を助けてくれた男がたまたま知り合いで、意気投合し同居を勧めたと。」
「まぁ、そうだ。」
「嘘ですね。人付き合いのへたな三成どのが、ちょっとした知り合いとはいえ意気投合などありえません。しかも喧嘩なんて今までしたこともなかったじゃないですか。」
「…」
「お、おい幸村…三成に言葉の矢が刺さってるから!」
「三成どの、よければその方にあわせてください!」

ファミレスで頭を抱えながら三成はとりあえず紅茶を飲む。その間も三成三成!と二人が追い詰めていく。

「……とにかく!今日は無理だ!向こうは社会人だし…」
「…やはりお金に困っていたのでは?居酒屋のバイトにも反対でしたが、身寄りもないと聞いていたし…一人暮らしはお金がかかりますし」
「幸村、それは大丈夫だと…」
「何かとりあえず幸村と私を安心させる情報をよこすのだ!」

うっ、と呻きながら三成は考える。少ししてから閃いたように笑って言う。

「左近は…俺の顔と性格を気に入っているから、大丈夫なのだ!」

墓穴を掘るような発言に、幸村と兼続は凍り付く。いち早く解凍された幸村がまたにっこり笑って三成の言葉をスルーした。

「…では来週のどこかでお伺いしますね。約束してくださいますよね?していただけないなら今から行きます。」

本気の幸村に三成はうなずくしかないのだった。

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