無双ビーエル

□可愛くて仕方がない
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「とーの!朝ですよ〜…って、アレ?今日は早起きですね。」

殿がげんなりとした表情で左近を迎える。
すでに身なりは整え、出されている膳に箸をのばしているところだった。

「朝から気色の悪い声を出すな。それから何度も言ってるが、いちいち俺の世話をやくんじゃない!そんなものは小姓がやる!」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。あ、ごはんついてますよン?」

頬に付けた米粒を左近がつかみ、そのまま殿の口に押し込む。む、と声で非難したが飲み込むしかなかった。
ああ、目眩がするほど可愛い。

「だから、俺は左近を軍師として雇ったのだよ!こんなことする為ではない!」
「つれないですねぇ、左近だって考えてるんですよ?少しでも殿の傍にいたいからやるんじゃないですか。」
「………もういい、食事がすむまで部屋の外にいろ。」

頭をかかえてしっしっと野良犬を追い払うように手で避けられる。しぶしぶ外に出れば朝のすがすがしい澄んだ空気のなか、深緑の庭が見える。廊下で腕組をしながら眺めていると、すぐに殿が部屋を出て、隣に並んだ。

「もうよろしいか?」
「ああ。その、なんだ…」

殿が口籠もりながら左近の服の端を可愛い指でつまむ。背の低い殿を上から見れば、顔を赤くして上目遣いをしてきた。朝からこの表情、やってくれるね。

「今日、左近と出かけられるのが楽しみで、早く目が覚めてしまったのだ。だから、いつもは…左近が起こしにくると嬉しい。」

美しい顔で照れながら素直にそんなことを言ってくれるなんて、左近があと10年若かったら完全に布団に押し倒すとこです。

「わかってますよ?殿は俺が起こしたほうが一日機嫌がいいんです…ご存じなかったかな?」
「う、嘘だ!」
「ははっどうでしょうね?…さて、では行きますか?馬はもう用意してますから。」
「うむ。」

一緒に出かけるといっても領内の水路計画の視察だが、久しぶりに馬に乗るのも楽しみなようで、機嫌の良い殿の頭を撫でてみる。
照れてはいるが、特に怒られないので、馬小屋までそのまま肩を抱いて歩いた。

「なぜここは治水工事がおくれている?つぎ雨が降れば水害がおきるぞ。」
「は、はい!すぐすすめます!」
「口ではなんとでも言える。とにかく急ぐことだな。」



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