無双クロニクル夢

□旅の始まり河越の夜
1ページ/2ページ



時は戦国。
世は乱世。

応仁の乱を口きりに鎌倉幕府の衰退が明るみになるや各地の豪族が所領争いに軍を挙げる。

京はすさみ、農地は荒れ、有力者は血を血で洗う争いをはじめた。


―――なぜ?



「夜明けだ。腐れ官領どもの寝首を掻くぜ。」


上杉八万の軍が河越城を半年にわたって攻囲した。
氏康は八千の軍をもって救援に向かうも上杉連合軍に連戦連敗。
そこで氏康は河越城の明け渡しを条件に上杉連合軍に講和を申し出るが一蹴される。
連合軍は北条弱しと見て、氏康を攻撃。さらに一勝を重ね勝利の雰囲気に酔う。

「まずは弁千代を送り込む。誰でもいいから先の合戦の手練を数人連れてこい。そいつに援護させろ。俺はその隙に奇襲の頃合をうかがう」
「ハッ…!!」

家来を下がらせると篝火を眺め、舌打ちをする。苛立ちより昂揚した心に苦心したからだ。勝ち戦こそ、舐めてかかってはいけない。仕込み杖を握り立ち上がる。

「行くぞ!…獅子の戦、見せ付けてやれ!!」





■旅のはじまり■




「…貴様か月は。」
「……え?あ、はい。」

夜戦に勝利を納め、河越城を取り戻し、祝う城内の人々の中から氏康は一人の若武者に話し掛けた。
弁千代を援護し、要所を強襲、敵の首を誰より上げた若武者の話を聞き、風魔小太郎に名を尋ねれば「クク…名は月。行けば解る。細くか弱い子犬よ。」とはぐらかされ、わざわざ探す羽目になった。

「…はきだめに鶴。」
「?」

首を傾げて呟いた氏康を見上げる。
愛らしいというよりかは美しいと形容されるのに幼さを残す顔は紛れもなく子供。まだ体も出来上がっていないらしく少年のように薄い胸板に細い棒切れのような手足がくっついている。
ここにいる兵の中で一番若い。そのことに驚きというより不快を感じた。しかもどう見ても女子。もとより氏康は子供の戦への参加には口うるさく否定している。

「まぁだガキじゃねーか…お前どこかの倅か?女で戦とは、親は頭イッちまってんな。」

戦に参加する農民には多少なりの恩恵があり、戦で活躍すればさらに稼げるため若くして駆り出される者も少なくない。

「…親はない。」
「ン?」
「え、と…親はいない。領民でもない。腕に覚えがあるので、各国を武者修業しようと思っています。」
「はあぁーッ?!」




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ