鬼と血の楔
□入隊志望なり
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真琴が入ってきた途端、場の空気は変わった。
いや、もともと入る前から、ちらほらと出ていた鋭利な殺気が表にでただけな気もする。
「こいつか…、見たのは?」
「ちっちぇし、細っこいし、まだガキじゃん、こいつ」
「なに言ってる。お前も十分ガキだ」
ガキと言い、言われた男は隣の髪をしばった男の方を横目で睨む。
「うわっ、ひっで。また同じこと言ったな、佐之さん」
すると、佐之と呼ばれた男は驚いたように「いや、俺じゃないぞ」と言う。
じゃあ、誰がとでも言うかのように、部屋にいる者を品定めした。
隣にいる鉢巻をまいた男に一番の疑いの目を向けるが、やはり違うぜと言われてしまう。
「んじゃ、誰だよっ、ぜってー突きとめてやる!」
隣にいる二人の男はその行動が、ガキだよなと顔で会話している。
「俺です」
「誰だ!?」
噛みつきそうな勢いで犯人を咎める。
「すいません。つい、口が・・・」
と手を挙げたのは、真琴だった。
「ははっ、こりゃおもしれぇ。死ぬかもしれねぇって時にあんなこと言えるなんて、ひひひっ」
鉢巻をした男は腹を抱えて震えている。
ひっでー、新八っあん。という声を押しのけるように、威圧感のある声が響く。
「いい加減にしろ。平助、新八」
一つ、咳払いをし、本題に入るぞと、その二人を睨む。
そして、真琴を睨む。
「お前は隊士になろうとして、ここへ来た」
真琴は頷く。
「変な笑い声が聞こえると思った途端、白い髪、赤く不気味に光る目。化け物かと思い、刀に手をかけたら…」
山南さんが切り捨てた、と自分に言うかのように土方はつぶやく。
「土方さん、今度こそ密偵じゃないんですか?早く殺しちゃいましょうよ♪それが一番、手っ取り早いじゃないですか。」
「一度は、違った。今回は…」
長い沈黙が続いた。それを破ったのは、男装をしたあの少女だった。
「あの…、お茶を…?」
「お前は、あの時の!?」
誠は思わず、立ち上がる。
「?」
本人以外、状況が読めない。
「こいつを知っているのか?」
「町で見かけたんです。この女の子の勇姿を、ね」
幹部の何人かは、驚いたように真琴を見た。
どうやら、秘密だったようだ。