鬼と血の楔

□勝敗
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「お前が言うガキは、お前より見る目があるようだぜ、平助」

うるさいなと平助は目で訴える。

真琴の目が鋭くひかる。

「そしてこの子が一度めですか?」

土方の目は相変わらず鋭かったがおもしろいといった。

「なかなか頭がきれるじゃねーか。まるで、知っていたみたいだな。そういや、隊士希望なのに名前を聞いてなかったな」

「俺の名前は緑川真琴です。ここに入ろうと思ったのは、この子が浪士にケンカを売っている姿をみて…」

ちらと男の方をみる。

「そして、そこにいる左ききの方の勇姿に惚れたんです。俺はこの人達のためなら命をかけても惜しくないです。」

人のよさそうな人相の男が口を開いた。

「頭がきれて、志も高いようだ。どうだ、トシ、隊士不足の今、このような隊士希望は嬉しいぞ」

近藤さんが言うならと少し、不満げな顔をすると考えこんでしまった。

そんな土方を茶化すように

「でも、腕がよくないと結局は使い物になりませんよ。まぁ、盾くらいにはなるでしょうがね」

と口角をあげた笑みを浮かべる。

「総司、いいすぎだ。しかし、総司の意見にも一理あるな」

「千鶴ちゃんみたく女の子だったりしてねー、なんて」

その沖田の発言に真琴はカッと頭に血が上る。

誰だって性別を疑われるのはいい気分ではない。

「男って証明してやります!!誰か俺と相手をしてください!」

それを狙ってかのように沖田は立ち上がろうとする。

「俺が相手をしてやるぜ!緑川!」

そんな沖田を制したのは先ほど馬鹿にされたのを今だ根にもっていた藤堂だった。

「早くやろうぜ」

部外者で捕まっていたことも忘れ、外を指す。

「八番隊隊長、この藤堂平助が相手だ!どっからでもかかってこいよな!」

「じゃあ、遠慮なく。はぁぁっ!」

真琴は声を張り上げた。

そして、藤堂の懐へ。

すかさず、相手もそれをかわす。

今度は誰からみても俺が不利な体勢に。

相手は勝ちを悟ったのだろう。笑っている。

しかし

真琴は口角を少しあげると

「残念だ」

とつぶやいていた。

そんなことを誠が言っているなんて知らないま
わりは

誰もが藤堂の勝ちを予感した。

金属と金属がぶつかった音が聞こえ、刀が飛ぶ。

藤堂の喉すれすれに誠の刃。

そして、飛んだのは藤堂の刀、上総介兼重。

予想外の展開にみな、口をあけて呆然としていた。

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