鬼と血の楔
□出会い
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男装をした女の子が町で声をはりあげている。
「あなたがお国のために尽くそうという高い志をお持ちなら、なぜか弱い女子供に暴力を振るおうとするのですか。町人を護ってこその侍でしょう!」
男は、フンと鼻で笑う。
あの子は馬鹿か。女一人で浪士には立ち向かうなんざ、無理に決まっている。
その時、浅葱色の羽織の男が刀を振るった。普通の者は剣筋を追えないほどの速さだ。
「安心しろ、みねうちだ」
「くそっ、幕府の犬がっ」
浪士は捨て台詞を吐き捨てるようにいうと、逃げて行った。
一瞬の出来事。
男は、口角を少しあげた。
あれだ。自分の求めたモノがあそこにはある。
そう強く感じた。
男、真琴はすぐに行動に移した。
「新選組、隊士希望です!」
でてきたのは一人の隊士。
「俺に言われても…幹部の誰かに連絡するから少し、そこで待っていてくれ」
「わかりました」
隊士の姿が見えなくなった途端、体の力が抜けた。
「はぁ〜、緊張したぁ〜。!?」
とっさによける。
「ひひひひひひ」
「!?」
こいつ、おかしい。
髪は白く、目は怪しく赤い。
『化け物』という言葉がよく似合う姿
やばい。
直感で感じる
刀に手を
「!?」
目の前の化け物が崩れ落ちた。
「すみません、私の監督不届きで…」
眼鏡をかけた、秀逸そうな男が誠に気付く。
「おや…、あなたはだれですか。ふー、あなたもまた運のついていない人、ですかね」
「山南さんっ、ちょっと待て!!」
山南と呼ばれた男は、声の主の方をみる。
「あぁ、土方くんでしたか」
誠の目は大きく開かれる。
ひじかた?あの鬼で有名な!?
「この方の処分はいかように?」
「こいつはあいつ同様、話し合いで決める。山崎、頼む」
「はっ」
いつのまにいたのか髪を後ろで縛った男が去っていく。
土方は誠に鋭い視線を誠に向ける。
「逃げるんじゃねぇぞ。逃げたら斬る。わかったな」
小さくてよく聞こえなかったが、真琴には彼が
「運のねぇ奴だ」
と慈悲の言葉をかけていた気がした。
連れてこられたのは屯所のある部屋のようだ。
「おせーよ、土方さん。」
「うるせー、無駄口たたくな。黙れ」
その言葉が合図だったかのように、真琴は部屋に入った。