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□最新の研究によると平山幸雄は死なないらしい
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※平山鷲巣麻雀敗北後
※すごくくだらない話



突然頭に受けた強い衝撃で俺のとびかかった意識は現実へと引き戻された。
重い瞼を開いてみると視界には白服、白服、鷲巣で白服。
ああ、そうだった。
散々になった記憶が今になってようやく形になった。
俺は負けたのだ。鷲巣麻雀に。



「まだろくに採血も終わっておらんのに気を失いおって。
負け犬の悶え苦しむ姿を見てこそ勝利の愉悦を味わえるというもの。」


そうか。朦朧とする頭で考える。俺は気を失っていたらしい。
そういえば俺は幼い頃から血とかそういうの苦手だった。
血液検査の度に自分の血を見てオエッてなってた。
俺って結構メンタル弱かったんだ。あ、死ぬ前には過去のことを思い出すっていうけれど。まさかこれって走馬灯?


「またぼんやりしてきたな。――おい!」


鷲巣が後ろの白服に呼び掛ける。
はっ、と白服の一人が右手に持っていたこん棒?いや違う。あれは麺棒だ。生地とか伸ばすやつ。を構える。
ちょっと待て。何故だか頭がじくじくしてきた。
嘘だと思いたいけれどさっき俺は麺棒で殴られて意識を取り戻したっぽい。いやぽくない。確定だ。地味な屈辱。採血で死ぬのも嫌だが麺棒で殴られて死んだなんて末代までの恥だ。
俺で末代だけどとにかくヤメロ。

突然部屋のドアが吹っ飛んだ。
誰かが向こう側からドアを蹴り飛ばしたのだ。
鷲巣以下白服達は「誰だっ」とか言ってるけどこういう傍若無人なことをするのは俺の知る限り一人しかいなくて。
自分から寿命を縮める様な真似はしたくないが嫌でも血の気が引いていく。


「邪魔するぜ。」


嫌な予感ほど良く当たる。白い髪に切れ長の瞳。間違いない。
出たよ。アカギという名の悪魔。
うわあ本当に邪魔だ。


「なっ!?アカギ!?貴様何しに来た!」


「平山幸雄を買いに来た!」


バーン!! それが効果音を付けて言うことか。
そもそも買いに来たって何だよ。
コイツなら人身売買くらい平気でしそうだけど。
いやそういう問題じゃない。血が足りないせいか思考がおぼつかない。
問題なのは何故コイツが俺を助けるようなことをしているのか。
狙いはなんだ?


「平山幸雄の負債分だ。
これでオレが平山を買う。」


アカギは札束の詰まったボストンバックを床に放る。
ちょっと多くないか。ほら鷲巣もきょとんとしてるじゃん。俺さすがにそこまで負けてないし。お前の中でのオレって何なの。
まあ良いかどうせアカギの金だ。
…良くないダメだろ。悪魔に借りをつくってたまるか。


「ふざけるな!!金の問題ではないわ!!
奴は勝負で負けたのだ。どうしようとこちらの自由。部外者が口を出す――」


「話が長いっ」


スパーンと良い音をたててアカギは鷲巣に勢い良くビンタをかます。え、ビンタって…。鷲巣も鷲巣で「へぶしっ」とか言いながら倒れちゃうし。
後は例の如く白服達の鷲巣様ー大丈夫ですか鷲巣様ー。


「平山幸雄はオレの唯一の親友っ…!
親友を助けるのは人間としての義務…責任っ…!」


お前が人間語るな。というか親友どころか友達になった覚えすらない。
一体何なんだこの茶番は。
ああ分かった。俺は夢をみているのだ。きっと死ぬ直前にみる悪夢――


「それじゃ行こうかユッキー。」


俺はやっぱり神様に嫌われている。
悪夢すらも願ったってみせちゃくれない。
バッチリ現実のアカギはさも当たり前の様に俺を担ぎ上げる。
さわんな。貧血キツイでしょ分かるよレバ刺しだねとか何とかほざくが何にも分かってない。
第一肩に担ぐな。頭に血が昇って気持ち悪い。色んな意味で吐きそうだ。
抗議を試みても意識はすでに混濁してきて呻き声しか出てこない。
何を勘違いしたのか白髪の悪魔は「礼なんかいいから」なんて朗らかに笑う。
鷲巣は「ぐぬ…」とか睨んでくるけど明らかに諦めムードだし白服達は言わずもがな鷲巣様。
一見ハッピーエンドに見えるが次に目覚めたときの自分の境遇が全くもって想像出来ない。これがハッピーでたまるか。
とにかくアカギは俺をどこに連れ去ろうとしている?
この世に死より恐ろしいものがあるなんて。
意識が失われる直前、俺は生まれて初めて死にたいと思った。








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