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□アカギから生意気さを抜くとただの変な人になる話
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※アカギ圧倒的片思い&猫かぶり






「カイジさん。」


ぼんやりと無防備な背中に突然声をかけられれば誰だってちょっとくらい驚く。
カイジの場合それがバイト中であってちょうど段ボールを持ち上げた瞬間であって中身がデリケートなカップラーメンであって驚きのあまり結構な高さから床に落としてしまったのが少し痛かった。
中身大丈夫かなとかは置いといてとりあえずカイジは振り返った。お客様優先。


「カイジさん、こんばんは。」


白髪頭がいた。
名前呼びとか何コイツ客の癖に馴れ馴れしい。
馴れ馴れしいけど目の前の白髪をカイジは知ってる。
かなりの頻度で来店する客。週3シフトのカイジが思うのだから確証は無いけど。
とにかく若いのに白髪で目立つし同僚の女の子がカッコイイとか何とかでざわいてたから覚えてる。
あと絶対カイジのレジに並ぶ。
喋ったことはない。
だってコイツ礼すら言わないし。
毎回うつむいて栄養ドリンク買ってくだけ。それだけ。
強いて言えばお釣り渡すときにいつも手が震えてる。なんかヤバイものでもやってんのかなと思う。


「カイジさん怯えないで。大丈夫だから。
だから落ち着いてよく聞いてください。」


はあ、と仮にもお客様相手に気の抜けた返事をしちゃうのがカイジ。
言葉には出さないけどいきなり何なんだ訳が分からんお前が一番落ち着けよって思ってること請け合い。
だって初めて喋った白髪はしどろもどろも良いとこ。
顔は赤いし小刻みに震えてるしあと人と話すときはちゃんと目を見ろ。挙動不審でなんか怖いから。


「あなたはストーカーされているんです。凡夫に。」

「凡夫はオレの知り合いで知り合いといっても親しくは無いんです。何回か喋った程度で。あんな奴嫌いだ。」

「凡夫はいつもあなたの帰り道をつけてるんです。
ちなみに凡夫というのは平山のことなんですけど。」


なんですけどじゃねぇよ。
ツッコミどころが多すぎて元々そんなに優秀じゃないカイジの脳味噌じゃ処理しきれない。
ストーカーて何。怖い怖い。つか知り合いなのかよ。凡夫とか可哀想だな。平山って誰。
こんなとき佐原だったら、とカイジは思わず現実を逃避。
きっと「ストーカーすかーそうすかーところでそこのクリームパンなんすけど発注間違えちゃってー1個で良いから買ってくれません?」くらい言う。絶対言う。
もういいや助けて佐原。ところがどっこい本日佐原は非番。圧倒的無頼。
ちなみに白髪のターンはまだまだ続く。



「誤解しないでカイジさん。オレは見てるだけで良かったんです。満足してたんです。
凡夫みたいにとっぽい真似をする気は無い。
ただカイジさんが心配なだけ。
オレを信じてくれますか。」


カイジにとって信じる信じないは禁句だろうがっ!
というか信じるって何を?
白髪の発言でカイジはいよいよ怖くなってきた。今まではドン引きで済んでたけどこの白線からこっちは恐怖が混じりますよー。
ここはアレだ。お客様のおっしゃる意味が分かりませーんとすっとぼけてバックルームに逃げるしかない。品出しとかもうどうでもいい。
そうと決まればよっしゃとカイジの奮い立たせた勇気は開始2秒でそれは綺麗にへし折れたのでした。
今まで伏し目だった白髪が真っ直ぐにカイジの目を射抜いていたから。けしてビビったとかそんなんじゃない。
ただ口が思い通りに動かなくてノーがイエスになっただけ。
簡単に言えば「はい、信じます」って言っちゃっただけ。
カイジのうっかり屋さん。


「良かった。カイジさんの仕事が終わるまで外で待ってます。
送っていきます。カイジさんが心配だ。」


ありがた迷惑。お前の頭のが心配だよ。
なんでこの白髪はただの客でいてくれなかったのか。
もうホント待たなくていい帰れじゃないとオレが帰れない。
無理矢理残業すっかなーとか珍しくカイジが労働意欲に燃えていると退店しかけた白髪が立ち止まった。
まだ何かあるの。お前いい加減自分の評価下げるの止めろよ。


「カイジさん、オレの名前はアカギしげるです。」


名乗られた。何でこの場面で顔赤くなるんだ。赤木だから?
多大なる精神疲労の為かカイジの(心の)ツッコミにキレがないぞっ。
で今更言うのもなんだけど何でお前オレの下の名前知ってんの。






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