fiction.

□秘密
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「クソ…なんで俺がここまで振り回されなきゃなんないんだよ…!そうか、既成事実だけ作っちゃえばあとはどうとでもなるんだ!」
長い廊下を西日に照らされつつ1人歩いて思案していたアロイスは、何かを思い立ったようで足早に保健室へと向かった。
今日はこの時間、月に一度行われる職員会議があるためセバスチャンも不在になっている。
受験勉強や留学の支度があるため、三年生は既に午前中にのみ授業がない日程が増えている。
ちょうどその日と職員会議の日程が重なったため、アロイスが保健室に身を潜めていても気付く者は皆無である。
「午後には必ずシエルは保健室に寄るし…隠れて保健室から出た時無理やり押し倒して弱みでも握ればシエルだって」
元々、持久戦が得意ではないアロイスは人間の道からは外れた手段を取ろうとしている自分を制御する理性を失っていた。
そして幸か不幸か、アロイスの予想通りシエルが保健室を訪ねた。しかし、セバスチャンはやはり不在…のはずであった。
「お待ちしておりましたよ。坊ちゃん」
「お前…今日は職員会議じゃ」
「坊ちゃんより優先させなければならない事などございませんよ」
「また調子のいい…んっ」
「はぁ…私の坊ちゃん」
「っ!」
普通の生徒と教員とは明らかに異なる会話に続いて、普段のシエルからは想像もつかない甘い声が漏れ始めたことに、アロイスは自身の耳を疑った。
「は…ぁ、ん」
「はぁ…キチッとされた制服姿のあなたをこの様な場所で愛でるのは、また違った感覚を覚えますね」
「言ってろ変態…んっ」
二人の会話でギシッと時折響くのは間違いなく室内に設置されたベッドから発せられている音だと自覚した途端、アロイスは今室内で行われていることを確認せずにはいられなくなっていた。
「は…ぁ」
「坊ちゃん、お教えしたでしょう?キスの時は目を閉じるようにと」
「るさ、い…はっ」
「あまり声を出すと気付かれてしまいますよ?まだ生徒がいる時間である上に、いつ急患が訪ねてくるか…」
「ならすぐ手を止めろっ」
「よろしいのですか?今やめたらお辛いのは坊ちゃんですよ」
次第にシエルの声はうわずっていき、その声が発せられるたびにアロイスの身体は熱くなり、鼓動すら徐々に早まり始めた。
さらに、先ほどから股間が制服を押し上げ始めている。シエルの声に反応するかのように布を自身がぐいぐいと持ち上げているのだ。
「はっん…ぁ、やっ」
「一度イッてしまいなさい…その方が楽ですから」
シエルへ放たれた言葉だというのに妙にタイミングが良すぎたため、アロイスは思わず身を潜めた場所から中の2人を覗き見た。
すると、セバスチャンに組み敷かれたシエルが高められた熱をセバスチャンの手の中に放つ瞬間であった。
「ひゃあっあっ」
サファイアのような瞳は涙で濡れ、白い肌はほんのりと薄紅に染まり、薄く形が良い唇の端からは銀色の筋ができ、細く綺麗な髪は汗ばんだ肌に貼り付けている。
そんなシエルを目の当たりにし、アロイスは腰に鈍痛が響きいつの間にか熱を下着に放ってしまっていた。
「はぁ、は」
「さぁ、坊ちゃん…私の事も気持ち良くしてください」
余韻に浸っていたシエルの細く長い足を撫であげ、セバスチャンはその蕾に指を突き立てた。
「ふぁっ、ん」
「あぁ、坊ちゃんが出したモノのおかげでドンドン入っていきますよ…解りますか?もう指が二本も根元まで入っているのが」
「やっ、あ…中、動かすな」
シエルの懇願など聞く気はさらさらないようで、セバスチャンは充分に慣らしたそこに先程から頭をもたげている自身を軽くしごいて刺激し、一気にシエルの中へと侵入させた。
「いっ、やぁっあ」
「あぁ、坊ちゃんの中は温かく締め付けて…何度繋がっても最高ですよ…っ」
激しく腰を動かしシエルの中に深く自身を突き立てるセバスチャンの額には汗が滲んでおり、ベッドの軋む音と水分を含んだ肉がぶつかる音、さらに独特の匂いが部屋に立ち込めて異様な空間と化していく。
そのような光景を初めて目の当たりにしたアロイスは本能に促されるままに自身を取り出し慰め始めていた。
「ん、あっセ…バ、あっ」
「良いですよっ坊ちゃん…はっ」
シエルの甘い声とセバスチャンの腰の動きに合わせて自身を慰める手の動きを合わせていくアロイスは必死に片手で口を押さえ声を我慢する。
「っ!出しますよ…っ」
「ら、らめ…中、はっあ!」
今までより更に深く強くシエルの最奥部まで自身を突き入れたセバスチャンは、シエルの制止も聞かず熱をその中に注ぎ込んだ。
それと同時に互いの腹でこすれていたシエルも達し、アロイスも気付けば自分の手に熱を吐き出していた。
三者三様に熱を出し脱力していたが、最初に動き出したのはセバスチャンだった。
やや熱めの湯を洗面器に張れば、シエルの身体を丁寧に拭っていく。
「本日はたいした授業もございませんし、早退しゆっくりされてはいかがですか?」
「むちゃをさせたお前が言う台詞か」
「申し訳ございません。ですが、このような関係を強いたのは旦那様ですから」
悪びれもせず答えるセバスチャンにシエルは大きなため息をもらした。
「腰には湿布を貼っておきますから、ご自分で荷支度をしてきてください。その間に後始末をしておきますので」
「あぁ」
身なりを整えたシエルは、気怠げな雰囲気を漂わせつつ間もなく始業のベルが鳴るであろう教室へと向かっていった。
「さて…そのままではさすがに帰れないでしょう?こちらでジャージにでも着替えたらいかがですか。アロイスくん」
「っ!…この変態教員」
名を呼ばれた時点で既にバレている以上、今更身を隠す必要などなくなったアロイスはセバスチャンの前に姿を現し睨みつけた。
「坊ちゃんを無理やりご自分のものにしようと企てておられていたようでしたので、きちんと理解していただこうと思っただけですよ。百聞は一見に如かず…それから、毎夜坊ちゃんを思い出して熱を処理できれば多少はストレス解消になれば体への負担も軽減されるかと…私はあくまで保健医ですから」
「っ…お前こんなこと許されると思ってんのか!理事長に全部話してやる!そうすればお前はクビだ!!人生も全部終わりだ!!」
「おや、それは困りましたね。私がここを去るとするならば、坊ちゃんの転校手続きもしなければ…」
「なに…?」
何故被害者であるシエルまでこの学園を去らなければならないのか。
確かに噂が広がればこの学園での生活は難しくなるかもしれない。
しかし、この学園システムは生徒主体で組まれ、運営委員会に各メディアのトップと関係がある者だらけである。
部屋にスキャンダルをリーク、ましてやメディアでの暴露は有り得ない。
もっとも、加害者である人間については静かに法定手続きが進められ、出所後にはその人物が存在していたという痕跡自体が、それこそ戸籍ごと抹消されている事もある。
故に、シエルが被害者であることはアロイスか本人が公言でもしない限り広まることは皆無なのである。
「不思議そうなお顔ですね…。坊ちゃんにも特に口止めされておりませんし、お話し致しましょうか。幸い、この棟は午後使用されませんし…」
いつもの白衣と眼鏡を外したセバスチャンは、今だ余裕の笑みを浮かべたままアロイスと向かい合っている。
「勿体ぶらずサッサと話せ…クソ変態保健医」
「よろしいですよ。坊ちゃんも戻って参りましたし、当事者を交えて…」
「!シエル…」
「アロイス…お前」
セバスチャンに促され振り返った先には、鞄を取りに行ったシエルが部外者のアロイスを睨みつけた。
「先程の坊ちゃんとの事を目撃してしまったようでして…」
まるで自分もまったく知らなかったのだとでも言うようなセバスチャンの物言いに、アロイスは再び睨み付けた。
「下手に騒がれては坊ちゃんに余計な負担をかけてしまいますから、今の内に解決しておく方が得策かと…」
「だから校内での行動は控えろとあれほど言ったんだ」
「シエル、どうゆうこと…この変態メガネクソ保健医に何か弱みでも握られてんの?」
心配そうに見つめるアロイスをよそに、セバスチャンはそっとシエルの背後へと回りその華奢な身体を抱きしめた。
「この僕に弱みなどあるか。こいつは…」
「おや、恥ずかしいのですか坊ちゃん?」
急に口ごもってしまったシエルに笑みを深め、セバスチャンは耳元で甘く囁いた。
まるで見せつけるかのようにシエルに絡んでいるセバスチャンの行動に、アロイスは苛立ちを隠せずにいた。
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