libretto

□空蝉
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「さぁ…、お目覚めの時間ですよ。坊ちゃん…おや、本日は特にご機嫌が悪いようで…」
「原因のお前が良く言う。…躯も魂も貪って、これ以上何を僕から奪う」
「…そうですね、それは…」
既に心のバランスを失った
歯止めをかけた鎖はちぎれて
欲という名のローションを全身に浴びて
摩擦させる身体の音を聞く
Why did you know? Why did you go?

『坊ちゃん、あなたの心が欲しいと言ったら…あなたは愛を欲する悪魔を笑いますか…』
遅すぎた心の震えを知り
絡まった運命の縄をほどいた
ありとあらゆるものに絡みつき
燃えそうな脳内の塊を出す
Why did you know? Why did you go?

「お前と一緒にいたら、契約を果たす前に死にそうだな…」
「ほめ言葉としてお受け致します」
『…どうせ貴方は、本当に私が欲しいものをくれないでしょう…』
夜はおぼろげ うるわしき声 空蝉模様
やわらかな肌 しとやかに触れ このときを濡らす何度でも
卑しくもただの獣と化して
君の全てを貪り喰らった

「お前はさぞ楽しいだろう。ひ弱な人間の僕が弄ばれている姿が」
『えぇ、貴方はずっとそのままで…私の思いに気づかぬまま、その命が尽きるまで』
裏腹な心に目隠しして
サディストに豹変する歌を呟く
Why did you say? Why did you go?
『貴方の記憶と魂に、私という存在が強く強く刻まれたなら…』

月がゆらゆら 揺らめく君の 空蝉模様
つややかな胸 けなげな瞳 撫でるように僕と交わった
始まりも終わりもない二人に
どんな手を差し伸べて救い出す?
『貴方の終わりから始まった私との始まりには、甘い言葉はそぐわないでしょう…?』
欲という名のローションを全身に浴びて
摩擦させる身体の音を聞く
Why did you know?

「さぁ、坊ちゃん…おやすみのお時間です。深い深い…いつまでも終わらない永遠の眠りへ…」
『セバスチャン…お前は、僕を…』
「私は…あなたが…ー‥でしたよ。」

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