libretto

□雪白の月
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「では…坊ちゃん」
「痛いか…」
「出来るだけ優しく致します」
「いや、思い切り痛くしてくれ。僕が生きた証が、残るように…さよならだ、セバスチャン…」
「はい。…終わりましたよ、魂は確かに。坊ちゃん…契約、すべて完了です…もう、聞こえてらっしゃいませんか。最後は、お屋敷のお部屋で…」

君がいなくなったあのとき
あらためて気がついたんだ
至るとこにばらまかれた
ふたりの脱け殻
何も変わってない部屋だけど
何かが変わった気がする
「おかしいですね、私は…悪魔なのに。貴方にはもう、見られることもないのに」
いつかのように笑えるように
頑張ってはいるけど…
弱さを見せたくなくて
無駄に強がる
この僕は君の瞳(め)に
どんな風に映ったの?
空に浮かぶ雪白の月
見上げるたびに思う
愛しただけ胸が痛む
ぽっかりと 穴が開いたみたい
さようならと言われるよりも
言う方がきっとツライ
もしあのとき切り出せたら
この痛み楽になっていたかな。
「このお召し物は、切り裂きジャックの時…こちらはドルイット子爵の時のドレス、それから…」
君と一緒に居たあの頃
時々、愛を窮屈だと
この身体のどこか片隅(すみ)で
感じ震えていた
オトコなんて情けないね
恋が終わるたび
脱け殼に寄り添って
生きていくしかないんだ
滲んでゆく雪白の月
強い北風のなかで…

「まさか、貴方があんな形で復讐を遂げられてしまうとは…人間とは判らないものですね。こうしてベッドに寝かせてみますと…ただ眠っているだけのようで、坊ちゃん…私は一度も貴方に伝えていなかった…貴方を、愛しておりました」
予想外の結末でも
君といた 日々は忘れないよ

誰かにとっては
くだらないモノでも僕にとっては
譲るコトも出来ないほど
大切なふたりの脱け殼
空に浮かぶ雪白の月
見上げるたびに思う
愛しただけ胸が痛む
ぽっかりと 穴が開いたみたい
さようならと言われるよりも
言う方がきっとツライ
もしあのとき切り出せたら
この痛み楽になっていたかな。
君がいなくなってはじめて
シアワセの意味を知った。

「これが…涙、と言うものなのですね…坊ちゃん。私は…」

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