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□林檎とハシバミ
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もしも願いが叶うのならば…
今、この瞬間をなくして欲しい…そう思う。
「片桐の気持ちはよぉわかった。せやけど、それに応えることはでけへん…」
僕の目の前にいる二つ年上のこの少し大人びた青年。
忍足侑士。
氷帝学園男子テニス部レギュラー。
別名、氷帝の天才。
この学校で、彼を知らない人などいないと言っていいほどの有名人。
そんな彼と僕は今、向き合ったままでいる。
場所は屋上。
「そっか…すみません…時間取らせて…ありがとう…」
それだけ言うと、僕は屋上から逃げだした。
もしも願いが叶うのなら…
すべてなかったことに…
そう願うだろう。