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□もう少しこのままで
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仕事を終え、化粧を落とし普段の袴姿で左之さんの元へ向かう。



「左之さん!ごめん、待たせた」


「お疲れさん」



少し片付けに時間を取られて、待たせてしまったことを謝るも
左之さんはさして気にしていないように、俺に労いの言葉をかけた。
こういう心のでかさが、女にもてるんだろうなぁなんて思ったり・・。



「で、話ってなんだよ」


「お前さぁ・・」


「なんだよ」


「いつまで女装続けんだ?」


「あぁ〜そのことかぁ・・・俺だってやめたいけど・・母さん怖いからなぁ・・」


「お前がソレ始めてから、新八が元気ねぇんだよ」


「え?」



ソレとはもちろん、女装のことで。
でも、俺が女装始めたことで新八が元気ないなんて訳が分からない。



「凌に会いたいんだと」


「・・・・・・」



ボンと音がしそうなくらいの勢いで、俺は自分の顔が赤く火照るのが分かった。
たぶん、会いたいという言葉に深い意味なんてないってわかっていても
そう思ってもらえたことが嬉しくて・・・。
今日、何も食べずに帰ったのも、食べ物よりも俺を目当てに来てくれたのかな・・なんて。



「凌はホントわかりやすいよな」


「は?!な、何がだよ!」


「新八に惚れてるってこと」


「ばっ!何言ってんだよ・・男が男に惚れると、バカじゃんっ」



左之さんには、隠し事なんてできないって
初めて会った時から思ってた。
俺の気持ちすらバレてるってことも、左之さんの視線、行動で気づいてた。
だけど、言葉にされたその思いを俺は認めることができない・・。
俺が”ホントに”女だったら・・なんて、女装してから何度も思ったことだ。


「俺は、そういうの関係ねぇと思うがな」


「・・・そう・・かな・・」


「そうだろ」



そのあと何を話したかなんてあんまり覚えてない。
俺の頭の中は、新八のことでいっぱいだったから。
そのせいで、もう一つ気づかなかったことがあって。
左之さんがチラリと視線を動かした先に、俺たちを見ている影があったこと。






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