風の間(長編)

□異世界(風魔視点)
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風魔は用意された部屋に入ると素早く布団を敷き彼女を寝かせた。
そして此処で一番気になっていたあの禁術の呪文を見ようと再び衣服を脱がすと突然呪文の字が消え掛かり彼女の目が開いた。
風魔は慌てて距離を取りクナイを構える。

?:「そう…警戒するな…この私でも流石にこの体じゃあ、動けぬ…。ククク、小僧よくこの娘を救ってくれた。礼を申すついでに頼みを聞いてくれんか?」

風魔:「貴様、何者だ!」

鳳凰:「ワシか…人間共には鳳凰と呼ばれておるが…。可哀想にこの娘は親にワシの生贄にされてな…。まあ、そんな事より北の方角に白神岳がある。そこの湖の水でこの傷を清めて欲しい。さすれば傷は直ぐ塞がる。」

風魔:「わざわざそんな事までしないと治らんのか?」

鳳凰:「先ほど我を追ってきた忍びに厄介な術を食らわされてな…。この薬だけでは癒えんのよ。」

風魔:「良かろう。但しお前らの正体を俺に教えろ。それが先だ。」

鳳凰:「やれやれ、これだから人間は面倒だ。風魔よ。其方の初代から伝わる神隠しの正体を知っておるか?」

風魔:「………。」

鳳凰:「その様子では余り知らんようじゃのう…。我々鳥類の極一部は異世界を行き来出来る。勿論ワシも含めてな。」

風魔:「異世界?」

鳳凰:「この世とは別にある世の事じゃ。また、時空も含めて過去や未来を行き来する事も出来る。この娘はその異世界からワシが追ってを撒く為にとっさに此処へ連れてきた。安心しろ、人柱力だがこの娘は大人しい。ワシが暴れん限り周りに危害はない。」

風魔:「人柱力?」

鳳凰:「ワシの様な人間には手におえん幼獣を体に宿した者の事よ。」

風魔:「……。」

鳳凰:「さあ、もう行け。このままでは術が娘の体を蝕み死ぬ。そうなればこの周辺もこの術の餌食となるぞ…。」

風魔:「!」

風魔は穩罠の体の異変に気づいた。負った傷口から妙な模様が体を徐々に覆うように広がって行くのが分かる。
気がついたら鳳凰の気配は消えていた。
彼女の顔は真っ青になり身体中から大量の汗をかいていた。そして息がとても荒く苦しそうに藻掻いていた。
このままでは不味いと分かり鳳凰の言った通り急いで白神岳の湖に向かった。
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