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□わたし、毒入り娘です。
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わたしは強欲。

それでいてお金と地位が大好物。

けれどみんなそれをわかってない。

性格を完全に偽っているし顔もその性格にまあまあついてきているからしょうがないとは思うけれど。


ほら、また。


「ずっと前から好きでした!付き合ってください!」


騙されてる馬鹿がひとり。

この人は氷帝学園の中でもそこまでいい血筋の人ではない。

となれば答えは決まっている。


「ありがとう…気持ちは嬉しいんだけど、」

「そっか…時間とらせて悪かったな。じゃあまた」


男子は泣きそうな顔で去っていった。


「ふう…あなたはわたしには釣り合わないっていうのに」


その独り言はそのまま虚空に呑まれるはずだった。

が、しかし。


「へえ、じゃあ誰なら釣り合うんだよ」

「えっ、」


しまった、と思ったと同時にわたしの目は一人の男子を捉えた。


「あ、…とべくん」


それはまさしくお金と地位にまみれた人物。

わたしの一番の標的だった。


だがこの事態は非常にまずい。


「…こんなところで何してるのー?」

首傾は安定の45度。

だけど案の定、跡部に効果はなかった。


「今更がんばったって無駄だぜ。最初からお前はそういう感じはしてたしな」


クラスは別だが彼は人脈が広い。

これはもうジエンドを意味していた。


「はあ…もういいわよ。わかったでしょ?わたしの本性は欲にまみれた悪女よ。みんなに言いふらすなりすれば?」


跡部は何も言わずにわたしに近づいた。


「んなことして何になる。俺はそんな面倒くさいことはしねえ」


跡部の顔がぐっと近くなる。

わたしは跡部と壁とに挟まれて逃げられなかった。


「だがな。俺はお前に惚れてやるよ」

「はあ?」


意味不明理解不能。

こいつは何をいっている。


わたしが訝しげな顔をしても跡部は笑うだけだった。


「だからお前も俺に惚れろよ」


そのあとはまるで魔法のように身体が動かなくなってキスされてキスされた。


「わたし毒入りよ?」

「んなもん慣れてる」


ああ、こんなわたしでもこの人なら愛せるかもしれない。

そんなことを思ったときにはもう彼は歩き出していた。




end

2013.2.27
 

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