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□全速力
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はやく
はやく
はやくきみのところへ。
一秒でも早く、きみに伝えたい。
止められないこの想いに気付いてしまったから。
「みょうじ…っ!」
彼女が振り向く。
「謙也…どーしたの?何かあった?」
息を切らす俺を彼女は不思議そうな目で見た。
「俺な、さっき気づいてもうたんや」
「うん、何に?」
「俺はな…お前のこと好きみたいっちゅうことに」
ぱちぱちぱち
何度か彼女はまばたきをしてそれからしばらく口を開けて、そして気がついたようにぷしゅーっとしぼんだ。
「な、なっ、なななっ!謙也なにいって…ちょ、やだこんなところで」
彼女の顔は真っ赤で、そしてここは廊下やから周りのやつらの顔も真っ赤で。
「お前、顔真っ赤や」
「だれのせいだよもう…」
あぁ、照れてんのやな。ってわかった瞬間、俺の顔も真っ赤になって。
「まぁ、その…わたしも…謙也のこと好きだし」
なんて照れながらもごもご言うきみを視界にとらえたときには、全速力で恋して良かった、って思った。
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全力少年は彼しかいないと思った。