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□小さな勘違い
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「もうすぐ卒業だよ…」


嫌だなぁ、とつぶやけば。


「別にいいじゃん。どーせお前も俺らと同じ立海大付属高校だろぃ?」

と、ブンちゃんは言った。


「まぁ、赤也は寂しいかもしんねぇけどよ」

その付け足しにドキッとしてしまう。

赤也とは二年前から付き合いはじめ、今もなお付き合い続けている。



「あー!!丸井さん!!幼馴染みだからって抜け駆けは許さないっすよ!!」


噂をすれば赤也がこっちに走ってくる。

ブンちゃんはやれやれと笑いかけて逃げていった。


「…赤也、心配しなくても私は赤也しか好きじゃないってば」

「…うん、わかってるけど…なんてゆーか、なまえ先輩は俺のものっす!!」


ちゅっ


と、触れるだけのキスをして彼は照れくさそうに走って行った。


「もー…大好き」

幸せだった。





「じゃぁ、今日はもうこれで解散っ!!」

テニス部の練習が終わり、
メンバーは更衣室に向かう。


私はいつもみたいに更衣室の近くで待っていた。


しばらくすると赤也の声が聞こえ、行こうとしたのだが…


「赤也、お前さん…いつまでなまえとそんな関係でいるつもりじゃ」

仁王の声がして、慌てて木の後ろに隠れた。


「…そうっすよね。先輩ももう卒業だしなぁ」

え?なんの話?


「高校いったらなまえだって心うつりするかもしれんしのぅ…」


心うつりなんて…


「そろそろ俺も彼氏彼女って縛りは止めたいんスよねぇ…」


赤也の言葉に心臓が止まってしまうかと思った。


「話すなら早い方がいいのでは?なまえさんのためにも…」

「そっすね柳生先輩!!今日にでも伝えますよ」

柳生までそんなこと…



私は逃げるように走った。


「あっ、なまえ先輩!?」

赤也に気づかれたみたいだったけど、お構いなしに走って逃げた。



「…ちょっ、なんで逃げるんスか!!」


でも、全国王者立海大付属の彼に足で勝てるわけがない。

すぐに追い付かれ、腕を捕まれてしまった。


「赤也のばかぁーっ!!離してよっ」

「な、なんスか。いきなりバカって!!」

ぐっと振り向かされてしまった。


「な、泣いてる!?なんでっすか!?」

うろたえる赤也に叫んだ。


「嫌いになったならそう言ってよ…別れたいってそう言ってよ!!」


「はぁ!?なんの話っすか!?」

赤也はひどく驚いた様子で聞き返してきた。


「…だってさっき、仁王と柳生と話してたじゃん…」

涙は止まらずどんどん溢れてくる。


「ちょ、それは誤解っす!!
だから泣かないで!!」

「え?」

顔を上げると困ったような赤也の顔。


「聞いてたなら今いっちゃいますけど…俺らが話してたのはプロポーズの話なんすよ…」

「ぷろぽーず…?」


はて、頭がついていかない。


「さすがにまだ早いと思ったんすけど…予約だけでもしとこうかと仁王先輩と柳生先輩と部室で話してて」

「…じゃぁ、別に別れ話じゃないの?」

赤也は笑った。


「俺がなまえ先輩のこと嫌いになれるわけないじゃないですか!!例えなまえ先輩が俺のこと嫌いになったって絶対離さねぇ」


それを聞いてまた涙がでてきた。

「…あっ、赤也ぁぁっ」


勢いよく抱きつくと、よしよしと頭を撫でてくれた。


「…で、プロポーズの返事はどーなんスか!?」


私は涙でぐしゃぐしゃの顔で笑った。




「…赤也のお嫁さんにしてくださいっ!!」


end


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