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□キスではじまる
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夕日が差し込む3年2組。


教室には日誌をかく私とそれをぼーっと見つめる白石くんだけ。


「白石くんは部活あるんやからいってええって」

そう言ったのに、彼は…

「俺も隣の席やから、最後まで一緒におらんとあかんのや」


といって今もぼんやりと私の目の前に座っている。


話すことがなくて、ふと思ったことを口走ってしまった私がバカだった。



「キスってどんな感じなんやろな…」

ハッとして彼を見ると、おおきな瞳が開かれていた。


「えっと…ぁ、いや。今のは違うんや…私、キスとかしたことないし、どんな感じなんやろな、ってふと思ってしもうて…だから忘れてっ」


恥ずかしくてうつ向いた私の手がぎゅっと握られた。


「し…白石く?」

「キス、しよか」

時間が止まったみたいだった。

沈黙のあいだが何時間のように感じられた。


「あの…それはどういう」

白石くんは真剣な目で私を見ている。

「男の前でキスの話するやなんて、してほしいて言うてるようなもんや」

「私はそういうつもりじゃなくて…」

白石くんの手に力がこもるのがわかる。


「言い方が悪かったな…俺がしたかったんや。ぼーっとみょうじさんのこと見ながらそう思ってたらみょうじさんから言ってきてくれた」

そう思ってた?
白石くんが私とキスしたいって思ってた?


「うそ…」

「こんなとこで嘘ついてどうすんねん」

信じられないくらい嬉しくてうなずいた瞬間、唇に柔らかいものが触れた。


「しっ…白石くん…」

「なまえ…」

急に名前を呼ばれて驚く。

「もう一回、したい」

ええ? とキレイな顔が私を覗き込んだ。

「…うん」

今度は長くて深かった。
そう、
まるでカップルがするようなキス。


キスのあと、彼と目があった。

「…好きや」

「白石くん…順番違うよ」


私はそういって今度は自分から顔を近づけた。



「私も、好き」

一瞬ちょっと驚いた顔を見せた白石くんだったけど、すぐに笑った。

「…なまえの初めて、全部俺がもらうからな」


end

(覚悟しときぃや)
 

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