遊撃ClocK

□PROLOGUE 01
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世界というのは常に理不尽ということを理解して動け――――――――




昔の昔、まだ自身が軍隊に所属していた頃、そして、軍を止めるきっかけとなった上司が、仲間が死ぬ度に祈りのようによく言っていた言葉だ
今の世の中にぴったしな言葉ではないかと思いながら、最近のお気に入りとなっているビルの縁部分で柱を背凭れに空を見上げた

空はからっとした目に痛いほど青が広がっているというのにこの国はこんなにも廃退してしまっていた



今がいつとかそういったことはもう関係ないと言ってもいいほどに一部の都市以外この国は機能を失っていた――――下手をしたら、まだ機能している都市を数年のうちに機能しなくなるかもしれないほどに状況は絶望的だ

この絶望的状況をかき消す方法なんてあるのだろうかと科学者さえ匙を投げているこの現状はおよそ10年前に起こった漂流物が原因であった

"それ"は人に近い形をしていた
ある集落の人間がそれを見つけて保護をした
保護されたそれは、集落の人間に「自分は可哀想な存在」だと半場洗脳的行為を行い、安全を確保した
―――――そう、安全を確保したのだ
安全を確保した後、それは至極当たり前の欲求を求めるままに、本能的に行った
仲間を、それと同じ生命体を作ることだった
どうやったのかは知らないがその集落の人間は一部を除いてそれと同じ生命体へとなった
一部は、それの成り損ないになるか中心都市へと逃げた
そして仲間を、率いる軍を手に入れたそれが次に欲したのは―――国だ
そこからはまるで急斜面を転がり落ちるように爆発的に成り損ないが増えていった

中心都市へと逃げてきた人々は、既に因子を埋め込まれており、それがスイッチを押せば伊俊にして成り損ないへと変化した。それはまるで病気のように伝播していき、中心都市は破滅を迎えた
次に被害を受けたのは都市に隣接していた住宅街や会社などが多く建つ場所だった

人も多く、被害は尋常ではなかったのは既に察しが付くだろう
そうして――人口は逆転した
残った人々は政府やそういった組織が集う首都へと逃げ込んだ
そんな人々を守るために軍も動いた
それでも相手は人外であった、化け物であった
成すすべなくとは言わないが軍の全精力をぶつけたところで相手の量の方が圧倒的な差によって軍もほぼ壊滅状態に陥った

全ての人々が絶望に顔を顰めていた時、政府は特殊部隊を設立した
それが特殊部隊「刻対処部隊 クロック」だ
部隊に所属する人々は皆が皆、この日之陽国の十八番であり、他国すら真似の出来ない力"超能力"が極めて高い選りすぐられた人物達だった
相手が数で攻めてくるならばと質で対抗しようではないかと政府の人間は考えたらしい
そしてその政策は功を成し、確かに数は減っただろう

しかしそれもまた長くは続かなかった
首都にそれとそれの同胞へと姿を変えた人々が現れたのだ
それらの力は圧倒的であった、しかしそれでも特殊部隊の人間は全力で戦った
戦って、戦い抜いて、それの同胞を三体、殺した
息をあげて、一時の休憩で心を癒していた時、それは姿を現した
顔には憎悪と悲壮と激怒といった様々な気持ちを露わにし、やってきた
そして彼ら、特殊部隊の人間はたった、たった一人の少年を残して壊滅

それ以降、いつ崩壊するかもわからないバランスの悪い天秤のように世界に静寂は訪れた
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