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□mhykログ
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*ブラネロワンドロ(2020.9.8執筆)
「晩酌」「シトリン」「誕生日」

「よう、ネロ。飲み足りなかったか?」
カラカラと笑うレベライトトルマリンを瞳に頂く男が笑いながらグラスを持ち上げる
ブラッドリーの部屋へと、突然やってきたネロに驚くこともなく軽い口調で言う男の言葉への返事だとでもいうようにふう、と酒精を帯びた息を吐く
「いや…その、アンタが見当たらなかったから…」
「だから抜けてきたのか?主役が」
「ん…」
どうやら既に酔いが回っているらしく、シトリンの瞳を潤ませて、素直な反応をするネロにふっ、とブラッドリーは笑いを零す
「ほら、来いよネロ」
自身が据わっているソファを叩けば、こくりと頷いてどこかふわふわとした足取りでやってきて、座る
――こりゃあ相当酔ってんな
目を細めてネロの様子を眺め、グラスに注いだ酒を傾けながら思考を巡らす
帰らすべきか、据え膳喰うか
不埒な考えがブラッドリーの脳裏を過ると同時にポツリ、ネロが言葉を漏らす
「アンタだけがいなくて、けど、アンタにこそ祝われたくてさ…居ても立っても居られなくて」
「だから来た?」
「ん…だめだったか?」
ぽあぽあして、地に足つかないような。寝落ちてしまいそうな不安定な中ネロが零した言葉にブラッドリーは肺に溜め込んだ息を吐き出す
「あー、別に悪かねぇけどよ…俺に祝われててめぇは嬉しいのか?」
「嬉しいっていうか…あんたに祝われたら”今年も年取れたな”って実感があってさ」
「…なんだそりゃ」
へにょりと力のない、だらしないというよりも心も体も力が抜けたことでネロ本来の柔らかい部分から構成された笑みが浮かぶ
その笑みを見て、ブラッドリーは頭をがしがしと乱暴に搔き乱して、グラスに残った酒を一気に煽る
「はぁーーーーー、可愛いこと言ってくれんなぁネロ」
酒に酔ったのか、はたまた沸き起こるふつふつと煮えたぎった感情からなのか。赤みを深めたレベライトトルマリンの瞳がネロを、シトリンの瞳を睨みつける
「あんま可愛いことばっか言ってと襲うぞ」
その言葉にネロは目を丸めた。その後すぐにシトリンというよりも蜂蜜のようにどろりと瞳を溶かして、笑う
「あんたにだったらいくらでも襲われて―なぁ」
そう返ってくると思っていなかったブラッドリーはぐっ、と息を詰めた後はぁーーっと息を吐き切る
「お前、マジで」
「んぅ〜、襲ってくれねーのか?」
「…怒るんじゃねーぞ?」
「んー…じゃあ」
「あ?なんだよ」
「おめでとう、って言ってくれよ」
目をぱちくり、と丸めた後にいやりとブラッドリーは目を細める
「いいぜ。誕生日おめでとうネロ」
「おう、ありがとうな」
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