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□mhykログ
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*密やかな楽しみ(2020.8.16執筆)
魔法舎で再会し、その後右往左往して時に周りの魔法使いたちの要らぬおせっかいやおちょくりでよくわからない拗れ方をしたりしつつも、賢者の努力とブラッドリーの根気によってどうにかこうにかネロとブラッドリーは付き合い始めた。
そんなある日のことである。

ブラッドリーと甘い一夜を過ごした後、先に起きたときにだけ味わえる至福がネロにはあった。
その至福はブラッドリー本人にだけは知られたくないと常々ネロは思っているが故に起きる気配のないときだけ味わえるほんの一握りの幸せなのだ。

床に乱雑に放り投げられた二人分の衣服の中からお目当ての紫色のシャツを引っ張り出して、慣れた手つきで羽織る。
ふわりと香るブラッドリー本人の素の匂いと彼が愛用する香水が混ぜられた香りがシャツに染みついており、そんなシャツを羽織れば、まるで香りで抱きしめられているような錯覚に陥る、そんな感覚にネロはほう…と息を吐く。
ついで、袖を通せば、食材の入った箱を運搬したりとそれなりに鍛えられた自身の腕ですらぶかぶかで、それでいて腕の長さも違うことで賢者曰くの「萌え袖」になるのを確認するような、そんな行いがネロは無性に楽しくて仕方ないのだ。

そうして、一通り満喫し終えれば、脱いで他の衣服とまとめて軽くだが清掃魔法をかけるまでが一連の流れであった。
そこまでいけば後は、時間を見つつ料理当番であれば起きて、そうでなかったり早く起き過ぎていたのであればまた、愛おしい男の隣で惰眠を貪るのだ。
そうして今日は、早く起き過ぎていて、尚且つ当番ではない。ならばブラッドリーを起こさないようにと気を付けながら、隣に潜り込み、目を閉じる。
じわりと移される暖かな体温に、次第に意識は揺蕩い、眠りへと落ちるのであった。

*耳痒い(2020.8.16執筆)
(ネロ編)
「あ?なにやってんだネロ」
「あー、耳痒くって」
「あんま掻くなよ。傷になんぞ」
「そうはいってもよぉ。痒いと掻くだろ?テメェも」
「…あ、それじゃあよ」
「なんで近づいて」
「舐めちまえば気にならなくなんじゃねーの?」
「は、何いっtやめっ!!」
(ブラッドリー編)
「あーーーかいぃ」
「ん?どうしたブラッド」
「耳が痒くってよー」
「ふーん…あ、そういえば」
「んだよ」
「賢者さんの世界には耳用の痒み止めがあるって言ってたの思い出してさ」
「ふーん。便利なようなこまけぇような」
「な。俺もそれ思ったわ」

*うだうだネロさんwithブラッドリーさん(2020.9.1執筆)
ははっ、どうしようもねーなって言葉に出して、項垂れて
どう足掻いても、アンタから与えらえる感情からは逃げられなくて。けど逃げたくてもがいて
逃げ切れたと思ったら無意識に握りしめてて。一体俺はどうしたいんだって自己嫌悪に陥って
そのことに気付いて、自分に落胆して
叫ぶ時期は過ぎた。喚く時期は過ぎた。絶望する時期は過ぎ去った
今は只、ただ諦めて、持て余して。全く俺はどうしたいんだと幾度と問いかけて
「はぁ」
人の息が漏れ出す音が聞こえる
ああ、きっと呆れたんだろうなって勝手に傷付いて。そんな資格なんて今はもう持ち合わせてすらいないっていうのに
両手で顔を覆って、ひっどい面してるだろう自分の顔を隠して
頼むからもう、俺に関わらないでくれって言外に表して
なぁ、頼むから察してくれよって人一倍人の感情に疎い男に願って
「テメェはまーた、うだうだうだと面倒くせぇこと考えてんだろうなぁ」
そう言って笑う声が聞こえた
笑う部分なんてどこにもないだろ?なんで笑ってんだ
どう足掻いても、一ミリも合うことがないっていうのに、それでも惹かれるんだ。アンタに
それが嫌で裏切って、逃げて。攻め立てられたら怖くて立ちすくむっていうのに、それでも攻めてほしいと思って
ああ、もう何を考えてるのか分からなくなってきた
「なぁ、ネロ。飯作ってくれよ」
「……テメェなぁ…」
「いつも言ってんだろお前。料理してりゃあ気が紛れるって」
ああ、その笑顔が本当に憎たらしくて腹が立つ。けれどどうしてこうも惹かれるんだ!

*「愛してるよ」ゲーム(2020.9.1執筆)
賢者さんから教えてもらった…というよりもなんとなく、話の流れで聞いた些細なゲーム
お互い酒が入っていた。ついでに言えば相手は珍しくご機嫌と来た
だから、ゲームがてらお互いに賭けをした
俺が負けたら"もう関わらないこと"
俺が勝ったら"話を聞け"
んだそれってアイツは笑ってたけど、きっと驚愕する話だ
「愛してる」
「おう、俺も愛してる」
「はいはい、愛してる…これ、いつまで続けんだよ。いい加減飽きてきたんだけど」
「ははっ。初めに言っただろ?先に照れた方が負け。愛してる」
「はぁーーー、乗らなきゃよかった…愛してる」
さぁて、最後の一押しだとばかりに、にやりと笑えばアイツは何かを察して顔を歪めた
今すぐその歪んだ顔を赤に染め上げてやるよ
「なぁ、ネロ。」
「な、なんだよ…」
ぐい、と身を乗り出して耳元で囁く
「お前のこと、もう二度と逃がす気ねぇほど愛してんだよ」
「っ?!は、ぁ??!!」
「ハハッ!真っ赤だぜネロ!」
「ず、っりぃやり方すんじゃねーよブラッド!」
「はんっ!どんな形であれ俺様の勝ちだ!」
「はぁーーーー、で?話聞けってなんだよ…」
「おう」
「…おい、待て。なんでこっちに移動してきて…おい!ブラッド!」
「二度と逃がさねぇ、つったろ?」
「は…いや。いや、待て、待って。えっ」
「愛してんぜ、ネロ」

*今日のブラネロ(2020.9.3執筆)
いないなと思ったら窓際の日向でくつろいでいるのを発見。床に座っているからソファを勧めたらここが一番暖かいからと言われた。猫みたい。[https://shindanmaker.com/831289]

いつもならキッチンに顔を見せるであろう時間帯になってもあの特徴的な白と黒の斑模様の髪にスカーフェイスを引っ提げた男が現れなかった
まぁ、たまにはこういう日もあるよな。だなんて思いはしたものの一度気になってしまったらどうしても頭の片隅に引っかかってしまい
ま、やることやったしだなんて言い訳にもならないことを自分に言い聞かせて何気ない足取りを意識しながらふらりと立ち寄った談話室に目当ての男はいた
丁度、窓からの日差しが当たるソファの座席部分に頭を預けて眠っているように見えた
音を立てないように細心の注意を払いながら、男の元へと行く
ある程度近づいても起きる気配はなく、余程疲れているんだなと小さく笑いながらそっとその、斑模様の髪を撫でる
日差しによりほんのりと暖まった髪を指で軽く梳き、時折指に絡めて
「何してんだネロ」
「うわっ、起きてた」
「そらぁ起きてんだろ…」
じとり、としたガーネットの瞳が俺を射抜く。どこか不機嫌さをにじませた瞳に苦笑いしながらも止められていないのを良いことに男の髪を梳く
「そういや…ここで何やってんだ?」
「んー、昼寝?」
「寝てんじゃん」
「うっせ」
軽口を叩けば、軽くふとももを叩かれた
「つーか、ソファの上で寝たらどうだ?」
「ん、あー」
至極まともなことを言えば、男は言葉を濁した
どこに濁す要素があったというのかと疑問に思い、男を見る
「…ここが一等あったけぇからよ」
そう言いながら男の髪を梳いていた手を掴み、そっと口づけを落としながらちゃっかり膝の上に頭をおいてきやがった
「ふふっ。なんか猫みてぇだなブラッド」
「ああ?賢者みてぇなこといってんじゃねーぞ」

*ブラネロワンドロ『跡』『体温』『夏の終わり』(2020.9.5執筆)

もう夏も終わりか。
夜の暗闇が以前より深くなっていき、夏のあの暑さとじめったさがまだ残ってはいるものの幾分が過ごしやすい気温になり始めたことに気付いたネロは自室のキッチンで一人、晩酌を楽しんでいた。
窓を開け、弱いながらに吹く風に心地良さを覚えながらなんとなしに目を細め、杯を傾ける
このぐらいの気温なら、あの男との共寝も悪くないかもしれない。
そう考えた所で何をバカバカしいことを考えているんだがと自身を笑う。
けれど、これから冷えるだろうことが確約されているのだ。あの程よく高い体温の彼と寝れば魔法要らず…とまではいかないものの良い夢を見れそうではある。
――あの傷跡だらけの身体を指で撫ぜ、そっと寄り添えば。触れあった部分から彼の体温が自身を侵食していくことだろう。
嗚呼、なんと甘美な想像なのだろうかと酔いが回った頭の甘やかな想像に笑みを浮かべているとコンコンコン、とノックが三回鳴る。
こんな夜更けにやってくる客人は滅多なことがなければあの男しかいない。ふわふわと浮いた足取りで扉を開けば、求めていた白と黒の斑の髪に鼻の上に派手な傷跡をこさえた舐めたら甘そうなピンクガーネットの瞳。
「一人で飲んでたのか?ネロ」
指輪で飾られた掌がネロの頬を撫でる。
「んじゃあ、俺も混ぜてくれよ」
そう言いながら、撫でていない掌で握った酒瓶を持ち上げて振る。その様子を一通り見た後に男から見たら業とらしい演技じみた口調でネロは言葉を甘い息と共に零す。
「はぁ。仕方ねぇーな…いいぜ、入れよ」
ネロが身体をずらせば、ブラッドリーはにっかりと笑いながらそっとネロの腰に掌を添えて入っていくのだった。

*カトラリー(2020.9.6執筆)
かちゃかちゃかちゃ。金属が互いに触れ合い、反発して、傷つけあう音を響かせる
一緒くたに持てば、がちゃがちゃと擦れて、どうか近づけないでくれと悲鳴を上げて
それならば、入れ物となる円状の筒に入れればジャララと解放されて、それでも煩わしそうに音を奏でる
まるで、考えが反発しあう俺とアイツみたいだな。なんて一人ごちてくだらないと自嘲の笑みを浮かべて、思考を吐き出すように息を吐き出す
どうやったって、お互いが交わることはないっていうのに。酷く、酷く惹かれ合って。ああ、なんて皮肉だのだろう。どうして出会ってしまったのかなんて、幾度と思考したことを反復して
がちゃがちゃ、かちゃかちゃ。食器を洗えばキーが高く、それでいて響く音を無遠慮に響き渡らせて
しゃー。水が流れる音に。ごぽっ。シンクに溜まった水が流れゆく音
自身の鬱憤を、卑屈を、全て一緒に流してくれる感覚を幻想して
けれども、どうしても一緒に流せないあの、眩く惹かれる横顔にそっと息を吐く
ああ、逃げられない
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