イナズマイレブン

□貴女を見つけた
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部活が終了し、それぞれが帰路につく。

「じゃな!鬼道」

「お疲れ様でした!」

「あぁ」

鬼道も仲間に挨拶を交わし、夕日に照らされた道を歩く。

河川敷の橋までやってくると夕日が川の水面に反射しキラキラと輝きを放っていた。

この場所にも、色々な思い出がある。

この場所こそ、俺に新たな決意をくれた大切な場所。

帝国時代の自分が嘘の様な...肩の力が抜けて気が少し楽になってる。

そんな気さえする。

【こんな気持ちになるなんてな...】

これがきっと普通の学生なんだろう。

帝国では味わえない空気に戸惑いもあったが、円堂や豪炎寺、雷門メンバーのおかげで、それなりに楽しくやれている。

少し擽ったさを感じながら、先へと進む。

すると、そこには見慣れた赤い車が停まっていた。



【あれは・・・】


ゆっくりその車に近づくと・・・


車に寄りかかりながら煙草を吹かす由美の姿が見えた。


中杉由美


彼女と知り合ったのは義父に連れて行かれた社交界での席だった。


財閥の、いかにもという女性が多い中、彼女は興味が無いのか・・・

バルコニーへと移動し本を読み始める。

そんな様子を見ている俺に義父は・・・

【あの人は、中杉由美さんといって、中杉家のご令嬢だよ】

中杉家・・・

【年齢は20歳だったかな】


俺より5.6上か・・


義父の話だと、彼女は賑やかな場所が苦手だという。

だからいつも、本を持参しているのだと教えてくれた。


するとそこへ・・・


【鬼道さん、ご無沙汰しております】

【中杉さん】

声をかけてきたのは中杉家の主人。


【初めまして中杉葉です。】

【初めまして、鬼道有人です。】

【宜しくね有人君、由美・・といっても本に夢中でこちらの声は聞こえて無い様だ】


そしてまた視線を彼女に戻す。


【有人、由美さんのとこへ行って挨拶してきなさい】

【はい、義父さん。中杉さん失礼します】


彼女の父親に一礼し、テラスへと向かった。


【立派になられましたね、うちの娘とは大違いだ】

【ありがとうございます。でも、気が合いそうだと私は思いますよ】


二人の親はそんな事を話し合い談笑していた。



鬼道は由美へと近づく。

こんな喧騒の中、お構いなしに本を読み進める。

彼女の横顔は月明かりに照らされていた。

そんな中、俺に・・


【初めまして、鬼道有人君】


本から視線をそらさず彼女は声をかけてきた。

これが中杉由美との出会いだった。
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