イナズマイレブン
□貴女を見つけた
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『お疲れ様、有人君』
「・・由美、待っていたのか?」
『ううん、ただ一服したくなってさ、それに夕日も綺麗だから』
「・・・そうか」
そう言われた鬼道は、少し胸が痛むのを感じた。
そんな鬼道を知ってか知らずか、由美は気にするそぶりも見せず・・・
『さて、そろそろ行こうかな』
「どこに行く?」
『さぁ・・・どこだろ、決めてないし』
相変わらずだ・・・彼女と初めて挨拶した時の会話を思い出す。
【何故・・・】
【気配には敏感なだけ。
貴方だってそうでしょう?
常に気を張ってないといけないじゃない、この世界は・・・それに貴方は、他の人達とは違うオーラがあるしね。鬼道有人君】
【・・・ふっ、確かに。
気が休まる暇もありませんね。
改めて、鬼道有人です。
よろしくお願いします、中杉由美さん】
【こちらこそ、よろしくお願いします】
第一印象は・・・一風変わった人・・・だった。
媚びてもこない、自分には関係ない、といった空気をさらけ出していた。
敢えて言うなら・・・自然体だ。
だが、俺は嫌いじゃない。
彼女と何も喋らなくても、この流れる空気がどこか心地いいと感じた。
俺よりも年上なのに、それすらも感じさせない。
後ろでは、音楽や人々の音で溢れかえっている中、挨拶を交わした俺達は、静かに月を見上げていた。
鬼道が一人、思い耽っていると・・・
『有人君も乗っていく?』
と、彼女から声が、かかった。
「・・・そうだな」
その返事に対した意味などない。
言うなれば・・なんとなく・・だ。
彼女と一緒に居たいと思った。
ただ・・それだけ・・
俺はそう返事し、助手席に乗り込んだ。
『今日お父様は?早いの?』
「いや、出張と言っていたな、でも何故?」
『なら、ちょっとドライブに付き合ってもらいたな』
「それはいいが、何処に行くんだ?」
『気まぐれに走りたい気分なんだよ、大丈夫。そんなに遅くはならないからさ』
車内はゆったりとした音が流れる。