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□雨の日
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「あーもう最悪」
家に着き一休みしたいところだが、そうもいかない。
帰りに雨が降るからと高野さんに車に乗っていけと言われたけどそれを断り電車で帰ってきた。
しかし天気予報通り雨が降り、雷が鳴り出し、さらに雨は雹へと変わった。
そのせいでびしょ濡れだ。
早く風呂に入らないと風邪をひいてしまう。
本当は湯船に浸かりたいが沸かすのが面倒だ。
今日もシャワーでいっか。
服を脱ぎながら洗面所に向かってる途中、インターホンが鳴った。
こんな時間に来る非常識な人間なんて一人しか思い付かない。
「……高野さん…」
予想通り高野さんだった。
先ほどから俺を身体中を舐め回すように見てきて正直気持ち悪い。
「ちょっとこい。」
「はい?えっ、ちょ、高野さん!」
いきなり腕を引っ張られ高野さんの部屋に引きずり込まれる。
「ちょっと高野さん!俺今から風呂に入るんですけど!私用なら後にしてもえませんか?」
「風呂」
「はい?」
「湯船沸かしてあるから入っていけよ」
「えっ!?いえ、結構です」
「いいから。折角沸かしたのに一人しか入んなかったら勿体無いだろ。何にもしねーから入っていけ」
それから入っていけ、結構です、のやり取りを何回か繰り返し、そのうちお得意の“仕事倍決定”が出てきて…結果的に入ることになった。
(だいたい上司の家の風呂なんて落ち着けるわけがないだろ…)
だが湯船に浸かってしまえばそんな考えもぶっ飛んでうとうととし出す。
(あー…このまま寝たらダメだな…)
頭では分かっていても段々と重くなっていく瞼。
とうとう眠気に負け湯船に浸かったまま寝てしまった。
「お…」
五月蝿いなぁ。
「おい…」
なんか身体を触られてる気がする……ん?身体を触られてる?
「おい!小野寺ッ!!」
「……………はい?あれ?なんで高野さんが…っていうかなんで俺裸…!?」
気が付いたら上半身裸だった。
かろうじて下着を着けているがものすごい恥ずかしい…!
「お前…人ん家の風呂で寝てたんだろ。」
「えっ?あ…す、すみませんでした…」
そういえば無理矢理連れ込まれた記憶がある。
「えっと、失礼しました。あの…俺の服は?」
「洗濯機の中」
「は?」
「洗濯に出したから今日は泊まってけ。」
「は…はああああああ!??じ、じゃあなんでもいいので服を貸してください!」
「嫌。貸してもいいけど帰るなよ?」
「あの、俺には拒否権というのはないんですか?」
「ない。」
じゃあこの服着とけと箪笥からトレーナーを出してもらった。
…………ただズボンは渡されなかった。
もうそろそろ高野さんの性癖に俺を巻き込むのはやめてほしいなあと思ってはいても、優しくだがしっかりと抱き締められ、ゆっくりと意識が薄れていったらもうそんなことどうでもよくなって。
結局今日も流されてしまった。
End