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□Pokky Game
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「ねえねえ、じゃんけんしよ!」
高野さんが会議に行った数分後、先輩が唐突にそう言い出した。
そしてこの先輩――木佐さんの手に握られているそれを凝視した。
「いいですけど…なんでいきなり?」
「だって今日はポッキーの日じゃん!」
ああ…なるほど。だからポッキーを買ってきたのか。
「でもなんでじゃんけんなんか…」
「いいから!いくよ〜!出さなきゃ負けよじゃんけんほいっ!」
そう言われ慌てて出す。
俺はぐー、羽鳥さんと美濃さんはぱー。そして言い出しっぺでもある木佐さんは……ぐーだ。
「あー、負けたぁ」
顔をしかめながら嘆いている理由がわからずきょとんとする俺。
「じゃあ…んっ」
「…はい?」
なにしてるんですか、とポッキーをくわえて喋れない木佐さんに替わって美濃さんが教えてくれた。
ポッキーゲームとやらを。
「学生のころ、11月11日11時11分になったら『ポッキー』って叫ぶ人いなかった?木佐も毎年言ってたらしいけど社会人でいきなり会社で『ポッキー』って叫ぶのはね。」
ちょっとダメでしょ?と言うが、学生でも授業中に突然『ポッキー』と言うのはダメだと思う。
「だから替わりにポッキーの日にはポッキーゲームをすることに決めたらしい。」
羽鳥さんが続けて言う。
「はあ…で、これはなんですか?」
「なにってポッキーゲーム。」
「はい!?」
「木佐がくわえてるのと反対の方をくわえて食べ進めていって唇がつく寸前で切り離す、って合コンとかでよくあるだろう?」
ああ…昔友達にお前がいると女の子が釣れるからと無理やり連れていかれた合コンで友人がやっていたアレか………。
「…………寸前で切り離していいんですよね…」
「もちろん、そういうゲームなんだから」
ニコッと美濃さんが笑いながら答えるがその笑顔が逆に怖い。
ぱくっ
「……………………」
「……………………………」
見つめ合いながらポッキーを食べ進める。
恥ずかしすぎる……!
もうそろそろ切り離していいよな…。と、思ったが、木佐さんに頭を押さえられて動けない。
………………もしかしてこの人…キスする気じゃ…!
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