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□嵯峨律
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十年前

俺は初めて恋をした。




その人を見るだけで俺は幸せだった。

でも見るだけじゃ足りず、彼が借りた本をこっそり借りていった。

彼の名前の下に自分の名前がある。

それだけで幸せだった。


ある日俺はいつも通り本を借りようと思い本を取ろうとした。

だが身長が低めだったため届かない。
それでも諦めず取ろうとしたその時思わずよろめいてしまう。


と、その時誰かにぶつかった。

そしてその人は後ろから本を取ってくれた。


その人とは「……嵯峨先輩…」
俺の好きな人だ。


その時の俺は何を思ったのか。

「好きなんです……先輩が……」

「俺は付き合ってもいいよ」


夢の様だった。



毎日図書室で待ち合わせしその後一緒に家に帰る。

たまに先輩の家にお邪魔させてもらった。






そんなある日のことだった。


前から気になっていたことを聞いてしまった。


止せばいいのに。



「……先輩…俺達つき合ってる…んですよね?」

「…嵯峨先輩は俺の事………好き…ですか?」





プッ





先輩は口に手をあて確かに笑った。


遊ばれた!!??



本当にショックだった。

つき合ってると思ってたのに、初恋だったのに、真剣だったのに…!!!


ショックのあまり先輩を回し蹴りしてしまった。


急いで荷物を持ち階段を下り挨拶もせずに家を飛び出した。



それでも先輩は追い掛けて来ず、そのまま俺は留学してしまった。



嵯峨先輩にとって俺は遊びだったんだ、そう思ったまま。









それが誤解だとわかるまであと十年。


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