La novela
□Same dream
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第1章
〜繋げない手〜
その日の任務が終了してからカガリのいる首長の部屋へ向かった
カガリからお呼びがかかった後、仕事が手につかなかったのは言うまでもない…
(頼みとは…)
コンコン…
扉を叩く
広い廊下にノックした音が気味悪く響いていた
「アスランか?」
扉の奥から聞き慣れたそう高くない声がした。
その声に鼓動が少しだけ速くなるのを感じる。
ノックする為に握った手は、少し汗をかいてるみたいだ。
「失礼します」
そう言って扉を開けるといつものカガリがいた。
部屋に誰もいないことに驚く、てっきり秘書やら付き人やらいると思っていた。
さっと部屋を見渡して視線をカガリに戻す。
少しだけ伸びた金色の髪、変わらない白い肌、見つめられると見透かされてるみたいで逸らしてしまう琥珀色の瞳
一瞬の間でカガリを嗜む。
一方カガリはアスランを見るなり仕事の話を始めた。
二人だけの再会を喜ぶ余韻すらないみたいに。
アスランもそれを大して気にもせず用件を伺う姿勢だ。
「実は私の名代としてプラントへ行ってもらいたい」
「プラントへ?…ですか?」
「臨時評議会代表ライトナー氏との会談は先日行ったのだが、そろそろ代表を決める時だろう?代表候補に選ばれているのはラクスらしい」
「ラクスが代表に?」
「あぁ代表になるのかどうかは分からないがな」
「それで何をしに?」
「プラント側から代表所信表明が行われるということで出席を求められたが生憎違う予定が入っている。」
「そういう事なら快諾致します。詳細はまたの機会にでも。」
「そうだな。それがいい。」
アスランとカガリは淡々と話す。
何事もなかったのかのようだ。
カガリはデスクに座り、アスランはその前に立ってカガリを見下ろす格好だ。
「それでは失礼します、代表」
なんともさっぱりとした時間…。
アスランは扉を閉めてそのままその前に立ち尽くした。
アスランが出てった後の扉をカガリは見つめていた。
そっと席を立ちゆっくり扉に向かっていく
扉に自分の手をかけそのまま扉を開けることもなくその場に立ち止まっていた
その向こう側でアスランも扉の前で何もできず立っていた
二人はもちろん、相手がたった1枚の扉の向こうでお互いを想い何もできずにいることを知らなかった
カガリは首長としての責任感から
アスランは立場上の問題とリングを外したカガリの真意がつかめず
二人とも自分を解放することができなかった
カガリは少しして扉から自分の椅子へと引き返した
アスランはカガリよりも少し長く扉の前に佇んできたが人の気配に我に返り来た通路を引き返した。