La novela
□Same dream
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第1章
〜繋げない手〜
オーブ連合首長国代表首長である
カガリといえば忙しい毎日に追われていた
オーブの復興もまだまだ時間がかかる
先日も、プラント臨時評議会代表
と会談を行ったばかりでデュラン
ダル死後、自国と他を行ったりき
たり全くといっていいほど自分の
時間なんてとれなかった
それでもカガリはオーブの為
平和の為、自分のプライベートを
犠牲にすることなど厭わなかった
あの日、人知れず左手の薬指に
はめていたリングを外した
(アスランを嫌いになったわけじゃない…)
時々ふっとあの日の事を思い出す
ことが無いわけでは無かったが
この忙しくてたまらない現状…
すぐに現実に戻らなければならなかった
「来週、またプラントへ行かなければならない。評議会代表選挙が近い。それから…」
「カガリさま、お体の方は大丈夫なのでしょうか?少しは自分の事もお考え下さい」
周りが心配するのも無理はない。
一体いつ家に帰って寝ているのか…そばで仕事をする者ですら把握できていない状況だ。
「私は大丈夫だ、お父様も見守って下さっている。オーブを良い国にしたい。もう戦争は嫌なんだ、出来ることは出来るうちにやっておきたいんだ」
凛とした態度には落ち着きと信頼感が漲っている
秘書の1人もそれならとカガリの言った事を承知した様子だった。
今は自分の事よりも何よりもオーブの事。
窓からだんだん高度を落とす太陽が見えた。
アスランは部屋に戻りゆっくりとシャワーを浴びていた
そして、今日のメイリンとの会話を思い出していた
ポツリと
「プラントに俺が戻ってどうなる…」
と呟く。
束の間の休みももう終わり
そろそろ日が沈む時間になっていた
ソファーに腰掛け窓の外を見ながら
(例えカガリが望まなかったとしても俺はオーブでカガリのそばで彼女を支えたいと思う。勝手なんだろうか?今まで回りに翻弄されたり本当に何が正しいのか分からなくなって自分の信じて戦ってた道が歪んでいった。今でさえ、良かったのかってそんな思いに苛まれることもある。でもずっと戦ってきて分かったこと…自分の中でブレなかったものだってあるはずだ…大事な人達はずっと大事なままだ。それはずっとずっと変わらない。キラと本気で戦ってた時だってやっぱりキラは俺の大事な友達に変わりなかったじゃないか。その大事な人達の中で一際大事なカガリをどんな形でも見守る…
それは俺の中で変わらない…
そして今はこのオーブでカガリがいる国で見守りたいって思ってる…
…あの指輪は…どうなったんだろ…)
そんなことを考えていた
___朝
アスランは一筋の涙を流していた
ただ…まだ起きてはいない
時々そういう朝がある
窓から差し込む優しい日差しがアスランを起こす
「… … もう朝か…」
(また泣いてる…)
どうして涙を流しているのか深くは考えずさっとシャワーを浴び朝食を済ませ出かける準備を始めた
最後にカガリにもらったハウメアの石を身につけ出かける
(出逢えて・・・良かった・・・)
いつもと同じ朝
この思いももうずっと変わらない。
アレックス・ディノであった時も、ザフトに復隊した時も…またカガリのそばに戻り、そして離れてしまっても…
この先どんな事があってもやっぱり変わらないのだろう。
本部につくとアスランにとっては今日がいつもと同じ日でないことが知らされることになった。
今日はオーブの首長が視察に来る…
カガリが来るようだ。
頭に入ったのは午後に視察に来るらしいということだけだ。
やっている事はいつもと変わらないが心の中ではそわそわしている自分がいた。
同じ国にいて、普通の人と比べれば近くにいるというのに顔を合わせるのは本当に久しぶりだ。
考えているのはカガリのことばかり。
どんな関係でも、どんなに距離が離れていたとしても彼女の事を支えたり見守ったりしたいと思っているのだが、アスラン自身はカガリの事が好きなであるが故、カガリの事を考えてしまうのは仕方なかった。
コーディネーターとナチュラル間では停戦状態の今、アスランがMSに乗り戦いに出ることなどはない
復興に力を入れているオーブ
それはプラントも同じ
再生に向けて進み出した両国
これからどんな未来が待っているんだろうか
そうこうしているうちに首長らが到着したという連絡を受けた
本部にいる全員が一堂に集まる
カガリ的には視察は視察で特に重大な用があるわけではなく、ただ代表として書類にサインし、他国の代表と会談してるだけではなく国のために働く者の状況なども自分の目で見ておきたいと希望しての事だった
この後には街の復興現場などにも顔を出す予定でいた
一通り回り見て周りに声をかけ現在のオーブの状況、本部の今に耳を傾けていた
視察はほんの30分くらいだっただろうか…
そろそろ次の視察へと国防本部を後にしようとしたときカガリはアスランの方へ歩みよってきた。
それはオーブの国の代表と言うよりはカガリそのものの雰囲気だ。
「アスラン、久しぶりだな。元気にしていたか?」
「えぇ。」
あまりに自然で拍子抜けしそうになる。
いつもと同じ調子で話しかけてくるカガリにとても懐かしさを感じた。
「アスランに頼みたいことがあるんだ。時間がある時に私の元へ来てもらいたいんだ。」
「分かりました。」
「それじゃぁ、よろしく頼む。」
アスランに背を向け歩いていくカガリに
「…代表!」
と呼び止めた
「…?」
「お気をつけて」
本当に言いたかった言葉なのか分からなかったが思わず口にしていた
「あぁ」
とカガリはアスランの顔を見て返事をした。
カガリと名前で呼ばない関係。
近くにいても遠く感じるとはこのことかもしれないとその時胸に沁みた。